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REALIZE Stories 社会の進化を、世界の可能性を、未来の希望を、描いた者たちの物語。

2024.07.29

世界を変え続ける「青色LED」。

あかさき いさむ

赤﨑 勇

名城大学終身教授?特別栄誉教授

1929年生~2021年没

自分の研究、未来への可能性を信じ、諦めず突き進んだストーリー

良いものをつくるために、あえて困難な道をゆく

  • 世界で初めて、窒化ガリウムのpn接合による 青色LEDを実現(1989年)
    世界で初めて、窒化ガリウムのpn接合による 青色LEDを実現(1989年)
  • 赤﨑終身教授、天野浩名城大学特別栄誉教授らによって 開発された窒化ガリウムを結晶成長させるMOVPE装置 (1980年代前半)
    赤﨑終身教授、天野浩名城大学特別栄誉教授らによって 開発された窒化ガリウムを結晶成長させるMOVPE装置 (1980年代前半)

 赤﨑のもとで学び、研究を支えてきた、名城大学光デバイス研究センター長の竹内。その目に写った赤﨑の姿とは。
 竹内は、青色LEDの発明が、世界にイノベーションをもたらす長きにわたる悲願だったと話す。それは圧倒的な小型化と画質を実現した薄型テレビを思い浮かべてみればわかる。
 テレビに使われる液晶ディスプレイは、R(レッド)G(グリーン)B(ブルー)の3つの原色から幅広い色を再現する装置で、RとGは1960年代に開発された。しかし、Bのみ研究が難航。発光体となる窒化ガリウムの質の良い結晶を生成できなかったことが原因だ。B、つまり青色LEDの結晶は、窒素とアルミニウムに似たガリウムという金属を材料につくられるが、わずかでも結晶に欠陥が入るときれいに発光しない。多くの研究者が挑み、苦戦を強いられ、研究は暗礁に乗り上げた。

 そんななか、アメリカからある足球竞彩网_英皇娱乐-任你博首页推荐が。セレン化水素ガスと亜鉛蒸気で合成するセレン化亜鉛で青色レーザー(青色LEDよりも高機能)が実現したというのだ。これに光明を見出した多くの研究者は、窒化ガリウムから離れていった。
 目に見える事実だけで判断するなら当然の選択だが、赤﨑は窒化ガリウムによる開発を諦めなかった。セレン化亜鉛は結晶がつくりやすい反面、壊れやすいという特徴がある。耐久性が低ければ実用には適さない。赤﨑が竹内に口癖のように言っていた言葉がある。「良いデバイスは良い結晶から」と。あえて困難な道を歩んだのは、社会での実装を見据え、自身の信念に忠実だったからに他ならない。

気の遠くなる実験を繰り返し、栄誉を掴み取るまでのストーリー

可能性0.1%。ゼロでなければ、実現できる

  • 赤﨑終身教授が名城大学に赴任した直後の2号館クリーンルーム(1992年)
    赤﨑終身教授が名城大学に赴任した直後の2号館クリーンルーム(1992年)

 1989年に青色LEDの研究が実を結び、2014年にはその功績が称えられ、ノーベル物理学賞を受賞。受賞の報告を受け、当時研究室のあった名城大学の2号館では歓喜の声が上がり、建物が揺れんばかりに盛り上がった。
 青色LED開発の困難と苦労を身をもって体験し、決して歩みを止めない赤﨑の背中を見てきた竹内も我がことのように喜んだ。質の良い結晶の実現に対しては、研究室の学生の中にすら懐疑的だった者もいた。成功する可能性をあえて定量化するなら0.1%。諦めても非難はされないだろう。しかし、赤﨑は違った。「たとえ0.1%以下だとしても、決してゼロではない」。0.1%の確率を高めていけば実現できると考えた。赤﨑が開発に要した期間は約20年。この事実がそれを物語っている。赤﨑は信念の強さに加え、慎重さも人一倍だった。

 竹内が博士課程のころに行った実験結果を理論式と比較することで、窒化ガリウムの表面がガリウムか窒素かが判断可能であった。竹内が「窒素です」と答えると、赤﨑は「そうか」と一言。納得した様子ではなかったという。しばらくするとまた呼び出され、同じ質問をされる。再度、窒素と答えると、また「そうか」とつぶやき、考え込む。その様子に竹内は、今一度冷静に考えた。理論式を見直し、式の一部の±が逆になることに気づいた。慌てて「ガリウムです」と言い直すと、赤﨑は変わらず「そうか」と答えた。だが、今度は納得した表情だった。
 竹内は語る。「先生はわたしに問う前から別の観点に基づいてガリウムではないかと考えておられたようです。一方で、私の当初の実験結果が整合しないことから、納得がいかず、判断に対して慎重になっておられたのだと思います」と。結論一つを導き出すにも慎重すぎるくらい慎重になることが大切であると教えられたという。

スウェーデン?ストックホルムで行われたノーベル賞授賞式(2014年12月10日)
スウェーデン?ストックホルムで行われたノーベル賞授賞式(2014年12月10日)

人々の生活は豊かになり、さらにその可能性は、後進の者たちに大きな夢を与え続けている

青色LEDで自動車にも革新を

  • 信号機もLEDに代わり、省エネに貢献
    信号機もLEDに代わり、省エネに貢献
  • 赤﨑終身教授が竹内教授に贈った言葉「研究に王道なし」(1999年)
    赤﨑終身教授が竹内教授に贈った言葉「研究に王道なし」(1999年)

 青色LEDは世界を変える発明だった。ブラウン管のテレビやPCモニタが液晶に、白熱電球や蛍光ランプがLED電球に代わった事実を見れば明らかだろう。
 省エネルギー化も著しく進んだ。技術者や研究者にとって、青色LEDは可能性に満ち溢れている。例えば、その材料である窒化物半導体は理論的には赤外から深紫外までの波長をカバーするため、この光デバイスで人間が必要とする光は全て生み出すことができる。また、窒化物半導体は、シリコンに比べ大電流を扱えるため、シリコンに代わる電子デバイスとしても注目されている。自動車は内燃機関からモーターへと遷移しているが、青色LEDの発明がなければこれほど早く発展しなかったかもしれない。

 世界にもたらした絶大なる可能性。それは赤﨑の、信念を曲げず、一徹に、真摯に研究する姿勢が生み出した賜物である。
 竹内は博士課程修了時、赤﨑が編集した教科書の表紙裏に一筆書いてほしいと願い出た。記された言葉は、「研究に王道なし」。こうすれば成功するというような道筋はなく、一歩一歩道を切り拓きながら進むしかない、そして、出た結果は慎重に検証せよ、という訓示だと竹内は解釈している。
 試行錯誤を厭わず、結果に一喜一憂しない、赤﨑はまさにこの言葉を体現する研究者だった。竹内は言う。「何かしら判断する際、悩んだときに立ち返る場所としてこの言葉を大切にしています」と。

著書『青い光に魅せられて―青色LED開発物語』(日本経済新聞出版社発刊)
名城大学天白キャンパス正門に設置された青色LEDを使った時計塔(2005年)
スマートフォンなど液晶ディスプレイのバックライトとして青色LEDが活用されている

竹内 哲也 教授

名城大学 理工学部教授?光デバイス研究センター長

大切なのは、姿勢

  • 2014年、名城大学の門下生の教員とノーベル賞授賞式直前の記念写真(左から上山智教授、竹内哲也准教授(当時)、岩谷素顕准教授(当時))
    2014年、名城大学の門下生の教員とノーベル賞授賞式直前の記念写真(左から上山智教授、竹内哲也准教授(当時)、岩谷素顕准教授(当時))

 赤﨑先生との出会いは大学での半導体工学の講義でした。一介の学生にとって、先生の講義は難しく、ほとんど理解不能。書き写すので精いっぱいでした。しかしその講義は、なんというか「学問」の手触りがあり、わたしにとって未知の世界への入口でもありました。すぐに研究室に入ることを決意し、研究室では窒化ガリウムの結晶成長実験を任せてもらいました。この研究はのちにわたしの専門となり、いまでも研究の中心的テーマとなっています。
 赤﨑先生との思い出はたくさんありますが、学問に取り組む姿勢を重んじる方だったと思います。ある講義で隣席の友人がわたしに大きな声で話しかけてきたことがありました。恐らく、うるさかったのでしょう、先生は、その友人を「出ていきなさい」と一喝。わたしへの叱責ではなかったのですが、恐れおののいたのを覚えています。
 一方、学生の様子をきちんと見ていてくれる先生でもありました。わたしが修士2回生のころ、実験でミスをして装置を壊したことがありました。すぐに先生に呼び出され、きつく叱られると思っていたのですが、あまりに落胆している私の様子をみて、「怪我はないか?わたしも若いころはよく失敗したものだよ」と気遣ってくれたのです。また、わたしが休日に研究室で実験をしているのを見て嬉しそうな表情を見せてくれることもありました。

研究者として

  • 当時使用していた赤﨑教授著書の教本
    当時使用していた赤﨑教授著書の教本

 いまは青色面発光レーザーと深紫外LEDの研究を進めています。青色面発光レーザーは、AR?VRディスプレイなどの光源として期待される半導体光デバイス。一方、深紫外LEDは、青色LEDに比べ発光波長が短く、高いエネルギーを有する光を発生させることができます。
 この高いエネルギーを有する光は、コロナウイルスを含む様々なウイルスや細菌の不活化を可能にするため、多くのラボで研究が行われているのですが、現状では投じたエネルギーの90%以上が熱に変換されてしまい、その効率の悪さが課題となっています。
 ただ、わたしは10年以内に投じたエネルギーの50%が光へと変換できる深紫外LEDが実現すると考えています。青色LEDも、実は最初は暗かったからです。実験を繰り返し、エビデンスを蓄積することで、実用的な明るさの青色LEDが生まれました。赤﨑先生が体現した通り、諦めず歩みを進めれば目標に近づいていくのです。「研究に王道なし」です。

竹内教授からメッセージ

 名城大学の立学の精神、そのキーワードになっている「実行力」。研究者に限らず何かをやり遂げるには、その力が大切です。しかし、一歩踏み出すことは怖いもの。「失敗したら」「否定されたら」「結果が出なかったら」と不安になる気持ちも分かります。結晶成長の分野では、とにかく実験を繰り返すことで初めて見えてくることが多く存在しました。例え先が見えなくても、まずは一歩踏み出してみる。まずは実行してみる。前に進んで、一段階成長できると、見える景色が変わります。見えなかったものが見えるようになり、高い精度で考えることができるようになります。その繰り返しが、夢の実現に向かっていく行程です。踏み出さないと状況は何も変わりません。実行力こそが、活路を見出す大きな力となるのです。

“まずは一歩踏み出してみる。進めば、新しい景色が見える。”

竹内 哲也 教授
名城大学 理工学部教授?光デバイス研究センター長

 幼少時に友人から借りた電子ブロック(トランジスタや抵抗を組み込んだブロックの配列によりラジオやうそ発見器が作製できる:1965年発売/学習研究社※現学研ホールディングス)をきっかけに電子部品に興味を持つ。1986年名古屋大学工学部に入学。1992年名古屋大学修士課程修了後、ヒューレット?パッカード日本研究所に入社。1999年名城大学博士課程修了後、米国Agilent Technologiesに出向。2004年キヤノンに移り、2010年より名城大学准教授に着任、2015年より教授。窒化物半導体などのIII-V族化合物半導体の結晶成長および発光ダイオード(LED)?レーザダイオードの開発に30年以上従事。