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REALIZE Stories 社会の進化を、世界の可能性を、未来の希望を、描いた者たちの物語。

2024.12.13

登録者数100万人の園芸YouTuber「カーメン君」

かめやま としゆき

亀山 利幸

株式会社Roots‐Twist 代表取締役

ガーデンガーデン株式会社 常務

1978年生

就職氷河期で唯一採用された会社に就職

 名城大学を選んだのは、生物化学の分野が得意だったこと、農学部のレベルが高かったことが大きな理由です。出身の愛知県東栄町はのどかな地域だったため、都会での生活やおしゃれなキャンパスライフへの憧れもありました。学生時代は仲間に恵まれて学びも遊びもいろいろな経験ができたと思います。授業では、週に一度、春日井の農学部附属農場へ行き、畜産の体験や実習をするのが好きでした。体を動かしたり自然に触れたりすることが気持ち良く、豚の去勢をしたことは今でも強く印象に残っています。

 在学中、特に苦労したのは就職活動です。当時は就職氷河期と呼ばれる時代で、何十社も落とされることは珍しくありませんでした。私は農業?植物分野で東海3県のメーカーや生産?販売など幅広く受けましたが、ことごとく不採用。その中で唯一採用されたのがガーデンガーデンです。卒業研究で絶滅危惧種の植物をテーマにしたものの、園芸の一般的な知識はほぼゼロからのスタートでした。

三度目の打診で店長就任。店のアイコン的存在に

  • 店舗で開催したキャベツの早食い大会。亀山さんはプロレスラーに勝利
    店舗で開催したキャベツの早食い大会。亀山さんはプロレスラーに勝利

 狭い領域を深く追求する大学とは異なり、会社では取り扱う商品に対して広い知識が求められました。入社当時は植物や花が特に好きではなかったのですが、仕事を通じて知っていくうちに興味を持つようになりました。部長やマネージャー、副店長などの役職を経て、店長になってほしいとお願いされるも、二度断りました。店長になると組織運営や経営の仕事ばかりになること、当時の店長は多忙で休みが取りにくかったことが大きな理由です。しかし、三度目の打診を受けたとき、それだけ私に期待してくれているのだと思い、覚悟を決めました。 店長になったのは入社17年目。地元でお店を長く続けていくために、まずは認知度アップを目指します。店長が有名になればお店も知ってもらえると考え、ロングヘアにヒゲ、テンガロンハット、レザージャケット?パンツの格好でお店のアイコンとなりました。お店の業務を従業員に任せ、他業種の方と交流したり、FM豊橋で番組を持たせてもらったり、小学校で野菜や花を植える「花育」の授業をしたりと、店の外での活動に注力します。お店では園芸ショップのイメージを変えるために趣向を凝らしたイベントも開催。キャベツの早食い大会やボディービルダーショー、チェーンソーアートの実演など、話題性を重視した企画を考えました。園芸の人気が低迷していく中で、価格ではなくサービスで魅力を伝えるために手探りの状態で挑戦し続けてきました。

 こうして地元での認知度が上がり軌道に乗ってきたところで、コロナ禍がやってきます。これが私にとって大きな分岐点でした。

コロナ禍を機に本格的に YouTube の活動を開始

  • いまや登録者数100万人超えのYouTubeチャンネル。動画の企画?撮影、イベント参加、花育活動、コラボ商品の開発など、さまざまな活動を通して園芸の魅力を伝えている
    いまや登録者数100万人超えのYouTubeチャンネル。動画の企画?撮影、イベント参加、花育活動、コラボ商品の開発など、さまざまな活動を通して園芸の魅力を伝えている

 不要不急の外出ができなくなると、意外にもお店の来客者数は増えました。家での時間を楽しむために園芸を始める方や、暇つぶしのために来ている方が多かった印象です。お店としてはうれしい反面、私は外での活動ができず時間を持て余していました。そこで思いついたのがYouTubeの活動です。せっかく園芸に興味を持ってくれた方が離れてしまわないように、動画でフォローアップしようと考えました。自分で植えた種が花を咲かせたり、野菜を収穫できたり、園芸の楽しさを伝えるハウツー動画にすることで、YouTubeを通じて接客しようという狙いでした。

 うれしいことに数カ月で再生数?チャンネル登録者数が伸び始め、店頭で声を掛けていただく機会が多くなりました。しかし、今度は私目当てに来店するお客さまへの対応に追われ、店長の業務に支障が出始めます。お店にも電話やメールで問い合わせが増え、店長でいることでお店に迷惑を掛けてしまう。悩んだ末にYouTubeの活動にかじを切ることを決め、YouTube関連業務専門の「株式会社Roots‐Twist」を立ち上げます。

 もう一つ、動画は従業員の教育ツールとしての役割もありました。私自身、若手のときに上司や先輩から教えてもらえなかった経験があり、店長就任後は従業員への教育について課題を感じていました。業務を通じて園芸の知識やノウハウはある程度習得できますが、さらに学びたい人に対して手厚く教える時間を確保できていなかったのです。動画ならいつでも視聴できて質問があればお店で答えられるため、とても役立っています。

地元から全国規模へ。園芸業界のロールモデルを目指す

  • 小学校での花育の様子。子どもたちと一緒に「マキシマムザ店長」のポーズ
    小学校での花育の様子。子どもたちと一緒に「マキシマムザ店長」のポーズ

 現在、ガーデンガーデンでは常務として在籍していますが、私の仕事のほとんどがYouTube関連です。動画の企画?撮影やイベントへのゲスト参加、花育活動、コラボ商品の開発など、活動内容は多岐にわたります。イベントでは鹿児島や横浜へ行ったり、さまざまな企業とコラボ商品を出したり、仕事の規模がどんどん拡大していると感じています。

 YouTubeの動画は今後も変わらず、園芸初心者向けに分かりやすく魅力を伝えていく予定。私自身、園芸が大好きなので多くの人にその楽しさを共有したいと思います。そして、これをエンターテインメントだけに留めず、ビジネスとして確立させることも私の役目だと感じています。園芸業界は良くも悪くも昔ながらの体質で、賃金が安く若者が少ないことが課題です。「園芸=花や植物を育てる」というイメージを脱却して、間口を広げていかなければなりません。そこで、園芸業界でもしっかり稼げる、園芸は楽しくて将来性のある業界であることを、私自身をロールモデルとして伝えていきたいと思っています。

将来は地元への貢献を視野に新たな取り組みも

 園芸は、まだまだ伸び代のある分野です。SDGsをはじめ、ファッションやグルメ、健康?美容などあらゆる分野と協働できるポテンシャルがあると確信しています。今後はYouTubeの活動に加え、メーカーとコラボ商品を開発したり、園芸の魅力を伝えたりしていけたらと考えています。

 また、個人的な夢ですが、将来的には地元の東栄町へ戻りたいと思い、そのために少しずつ動きだしています。その一つが、廃校になっている母校でもう一度学校を作るプロジェクトです。母校に花を植えて、園芸に限らずさまざまな業種の人を先生として招き、子どもから大人まで学べるような学校にしたいと考えています。さらに、これから空き家が増えていくと思うので、古民家を活用した施設や移住してくる方が住みやすい家にするために、植物を取り入れた提案をしながら地元に貢献していきたいです。

亀山 利幸
株式会社Roots‐Twist 代表取締役 / ガーデンガーデン株式会社 常務

1978年生まれ。愛知県東栄町出身。名城大学農学部生物資源学科卒業後、ガーデンガーデン株式会社に入社。2017年に同社店長に就任。「マキシマムザ店長」「3代目マキシマムザ店長」と名乗り店舗でのイベント開催、店外の活動に注力。コロナ禍を機に2020年4月より本格的にYouTuberとして活動を開始。2021年に株式会社Roots‐Twistを設立し代表取締役となる。YouTubeの「カーメン君」ガーデンチャンネルは登録者数約100万人を記録。現在は人気YouTuberとして企業との商品開発、イベントへのゲスト参加、全国の小学校への花育活動など幅広く活動している。

YouTube「カーメン君」ガーデンチャンネル