Challengers' Action
悩める高校生の声に、大学生が応える。
進路選択や受験体験を集め、作り上げた冊子。
池之上夕菜 大石花帆 椿井菜々
2023年05月19日
ブリッジ?プログラム(2年次以降プログラム)
2023年2月に発行された『名城を考えてる高校生に読んで欲しい!!! 私たちの進路選択』。名城大学で学ぶ先輩たちの、進路選択や受験にまつわるリアルなエピソードがたくさん掲載されています。チャレンジ支援プログラムのアワープロジェクトでこの冊子をつくったのがVOICE。進路に悩める高校生をサポートしようと3人の大学生が挑んだ活動をご紹介します。
アイデアのきっかけは、学習支援のボランティア
VOICEのメンバーは、法学部の池之上夕菜さん、同じく法学部の大石花帆さん、人間学部の椿井菜々さん。みなさん1年生後期からチャレンジ支援プログラムに参加し、2年生のほぼ1年をかけてVOICEの活動に取り組みました。
VOICEを立ち上げるきっかけとなったのは、池之上さんと大石さんの学外でのボランティア活動だったそうです。1年生時に受講した「ボランティア入門」で、名古屋市内で行われている小中高生向けの学習支援の活動を紹介され、参加していました。
池之上さん:学習支援は、勉強を教えるだけでなく、子どもたちの居場所づくりの活動でもあります。ボランティアとして参加するうちに、自分も勉強のお手伝いに縛られない支援をしてみたいと思うようになりました。高校生と話していると、「こんなことが知りたい」という声も聞こえてきて。こうした経験がVOICEを始めるきっかけになりました。
大石さん:私は、学習支援に参加するまでは、年下の子と関わる機会がほとんどありませんでした。勉強のサポートをしながら、友達付き合いの相談に乗ることもあり、子どもたちの生活の支えのひとつになる活動だと感じました。学習支援を通して、高校生とのコミュニケーションにも関心を持ったのが、VOICEへとつながったと私も思います。
高校生を応援する活動に挑戦しようと決めた池之上さんと大石さん。ふたりの思いに共感して、椿井さんもチームに加わります。
椿井さん:チャレンジ支援プログラムに参加した時は、どんな活動がしたいか決まってはいなかったんです。プログラムの担当の方と話すと、教職の講義をとっていたこともあり、VOICEに参加してはどうかと勧めてもらいました。高校生への支援は興味に合う内容だったので、一緒にチャレンジしようと参加を決めました」
大学2年生の6月、学習や教育のテーマに関心を抱く3人がつながり、VOICEの活動が本格始動しました。
一人ひとりに声をかけ、体験記とデータを収集。
チームの発足時、VOICEのミッションとして掲げたのは大きく二つ。一つは、高校生に配布する受験体験記をまとめた冊子をつくること。もう一つは、高校訪問をして自らの高校時代の体験を伝えること。この方向性が定まるまで、あれこれと思案したそうです。
池之上さん:アワープロジェクトとして動き出す前に、何をしたいかまとめて、プレゼンテーションをしなくてはいけません。VOICEの基本路線は最初からそれほど変わってはいませんが、アドバイザーの方々からたくさんの助言をもらい、考えるべき点がたくさんあるんだと実感しました。高校生に冊子を手に取ってもらう工夫、高校訪問の機会はどうやってつくるのか、ターゲットは誰にするのか。私たちのこだわりを大切にしつつも、いろいろな方の意見をきちんと受け止めるべきだと、経験を通してよく分かりました。
大石さん:受験体験記をまとめるなら、成功だけでなく失敗のエピソードも載せられたらいいなと思っていました。私が高校時代にそんな冊子を読んで、すごく印象に残っていたので。それで『不合格体験記』なんてタイトル案も出していたんです。けれど、「ターゲットをきちんと定めて、その人たちに合う内容とタイトルを検討した方がいい」とアドバイスしてもらい、自分たちの視点を省みながらアイデアを深めました。
どんな冊子にするか検討を重ねた結果、主なターゲットは「名城大学に興味を持っている人」と「進路選択で困っている人」にすることを決定。「名城大学」を強く押し出し過ぎないバランスで、多くの人に手に取ってもらえるようなタイトルやデザインを考えました。
冊子の方針が決まり、各自が受験体験記の執筆依頼や、名城大学生へのアンケート調査をスタート。全学部全学科の人から体験記を集めようとしますが、予想以上に苦戦しました。各々のつながりだけでは、なかなか辿り着けない学部の人がいる。学部の友人やサークルの仲間をつたって書いてくれる人を探し続け…。活動期間ぎりぎりまで粘ったかいもあり、一学科だけ見つからなかったものの、幅広い経験談を収められました。
さらに、冊子の後半には、高校生の声をもとに名城大学生に質問したアンケート結果が掲載されています。調査数は284人。お昼休みに学内で直接声をかけるなどして、3人が足で集めました。コツコツと積み重ねた活動の成果が、ひとつのデータとして示されています。
集めた情報を整理し、誌面へと落とし込む段階では、学外の印刷会社ともやりとりしました。「こんな冊子にしたい」と伝えて、実際に形にしてもらう。社会人と関わる機会も、プロジェクトで得た経験のひとつになったようです。こうして、冊子が完成しました。
冊子の制作を進める一方で、高校訪問については新型コロナウイルスの影響もあり、なかなかチャンスを得られませんでした。そんな中で、椿井さんに母校から卒業生講話の依頼があり、体験談を話すとともに、冊子を配布できました。
椿井さん:私たちの冊子を手に取った印象についてアンケートをとってみると、「内容が面白そうで読みたいと思った」「進路が決められていないから読んでみたい」といった回答がもらえました。ターゲットとして想定してきた高校生に興味を持ってもらえて嬉しかったです。
受験と向き合う上で、疑問や不安はそれぞれにあるもの。高校時代までのバックグラウンドや現在の専門分野もさまざまな先輩たちのリアルなエピソードは、高校生たちの進路選択で役立てられるものになっていくのでしょう。
ご縁の大切さ、人との関わり、作り上げる達成感。それぞれの成長。
最後に、VOICEの活動を通して得た気づきや変化について3人に聞きました。
池之上さん:一番強く実感したのは、人とのご縁の大切さです。私は学内のボランティア協議会にも所属していて、そこでのつながりから印刷会社さんにご協力をお願いできました。これまでいろいろな活動に参加してきましたが、そこで築いた人間関係が新しいチャレンジを後押ししてくれるものになるのだと感じています。
VOICEでは、初めてリーダーを務めさせてもらったんです。チャレンジ支援プログラム内の1年生の講義では、リーダーシップについて「引っ張るだけでなく、話を聞く姿勢も大事だ」と教わり、そんな学びを実践する機会にもなりました。
大石さん:企画を考えてプレゼンテーションをするのが初めてで、その経験は他の講義で発表する時にも活かせています。どうやって伝えたらいいか困らなくなりました。
それから、たくさんの人に協力してもらえたのも嬉しかったです。体験記をお願いした時も、快く「いいよ」と受けてくれる人ばかりで。温かみを感じると同時に、私自身の人との関わり方にも変化がありました。何かお願いするハードルが下がり、逆に周りの人から頼まれる機会も増えた気がします。話しかけやすくなったのかもしれませんね。
椿井さん:今回の冊子のように、形に残るものを一から作り上げた経験は今までありませんでした。3人で完成まで辿り着けてよかったです。達成感と喜びを得られました。
アンケートをお願いする時、最初はすごく緊張しました。けれど、勇気を出して何度も繰り返すうちにだんだんと慣れていって、徐々にはじめましての人とのやりとりも楽しめるようになったと思います。もともと人と話すのは好きなので、そんな性格を活かし、伸ばすことができたのではと思います。
約1年のチャレンジを経て、三者三様の成長が生まれたようです。VOICEの活動はこれで一区切りとなりますが、この先もそれぞれが名城大学内の活動などで今回の経験を活かし、力を磨きたいと意気込みを語ってくれました。ひとつの挑戦が、また次の一歩へとつながっています。