この度,本学協定校であるベトナム国立交通運輸大学(UTC)土木工学部におきまして,3年次生を対象とした短期講座を行いました。この講座は,2019年に本学とMOUを締結した際,交流内容に含まれており,2020年度から実施する予定となっていました。しかし,コロナ禍の影響により延期され,今回ようやく実現したものです。 UTCとの交流は,本学アジア研究センター(現:インターナショナル教育?研究センター)での公募型研究プロジェクト(2018-2021年度,http://marc.meijo-u.ac.jp/japanese/project.html)をきっかけに始まりました。その間,4名のUTC卒業生が本学大学院(修士課程3名,博士課程1名)に留学しています※1。さらに,UTCが主催した国際会議(ICSCE)のうち,2020年(/news/detail_24583.html),2022年(/news/detail_28180.html)において,基調講演ならびに研究室所属大学院生による発表を行っています。
※1博士課程に留学しているNguyen Anh Ducさんは,「第1回赤﨑勇賞」を受賞しました(2023.3)。 /news/detail_28465.html
講座の内容は,「再生材料:日本における適用と技術」をテーマに,日本における建設廃棄物,工業副産物の再資源化技術について講義を行いました。具体的には,建設廃棄物の中で最も量が多いコンクリート廃棄物(コンクリート塊),石炭火力発電所から発生する石炭灰,鉄を製造する際に溶鉱炉から発生する鉄鋼スラグを対象としました。なお,これらの内容は,本学理工学部環境創造工学科の講義科目(2年次,後期)である「材料リサイクル」の講義内容(第12回:建設廃棄物2,第14回:溶鉱炉?発電所等の副産物)に,ベトナムにおける最新の研究成果(UTCからの留学生を中心に研究を進めています)1),2),3)を加えています。具体的には以下の通りです。なお,講義資料※2は下記に公開していますので参照して下さい。
※2講義資料:https://researchmap.jp/dosho/others/41626424
参加者は第1回が約70名,第2回が約60名でした。講義においては,真摯な質問や意見があり,参加学生自身が自国の持続可能な発展に欠かせない重要な課題として捉えていることが伝わってきました。 第1回 2023.2.22(水)13:00-15:00 持続可能な再生骨材コンクリート技術-低品質再生骨材の構造用コンクリートへの利用1),2) コンクリート塊から製造される低品質再生骨材の構造用コンクリートへの利用技術として設計法と品質管理技術について,日本における適用事例を紹介しながら講義を行いました。現在,ベトナムは経済発展が著しく,建設ラッシュとなっていますが,一方で膨大な建設廃棄物が発生しています。しかし,その多くが埋立処分となっています。安全性と品質の保証,環境リスク低減,費用対効果を考慮した適切な再資源化技術の構築を視野に講義をしました。 第2回 2023.2.24(金)13:00-15:00 溶鉱炉および発電所からの副産物の再資源化ーフライアッシュ(FA)および高炉スラグ微粉末(GGBFS)のコンクリート用混和材への利用3) ベトナム国内で石炭火力は総電力出力の約30%を占めています。現在,ベトナムにおいて石炭灰の発生量の約40%は有効利用されていますが,残りは廃棄されており,深刻な環境汚染を引き起こしている状況にあります。また,鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグの発生量も多く,適切な再資源化技術の構築が望まれています。これらの再資源化技術として石炭灰から得られるFA,鉄鋼スラグから得られるGGBFSに対し,コンクリート用混和材への有効利用技術について講義を行いました。なお,ベトナムのFA,GGBFSともに日本産業規格(JIS)とほぼ同様の規定となっています。
【参考文献】 1) Dinh Van Linh,Nguyen Anh Duc,陶宇洲,錦木健二,道正泰弘:ベトナムの建設工事における再生骨材コンクリート技術の適用,名城アジア研究,Vol.10,No.1,pp.5-20,2020 http://marc.meijo-u.ac.jp/images_topic/marc_vol10_no1.pdf 2) Nguyen Anh Due,Nguyen Van Huynh,道正泰弘:ベトナムにおける低品質再生骨材を用いたコンクリートの性能評価および調合設計,名城アジア研究,Vol.11,No.1,pp.13-26,2022 http://marc.meijo-u.ac.jp/images_topic/marc_vol11_no1.pdf 3) DAO Thi Phuong, 道正泰弘:ベトナムにおけるフライアッシュのコンクリート用混和材への利用,名城大学理工学部研究報告,第61号,pp.81-86,2021 /academics/sci_tech/pdf/2021_Meijo_University.pdf
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