育て達人第012回 澤田 慎治

企業戦略としてのデザイン 学生スタッフ用ジャンパー作りで実践

経営学部 澤田 慎治 助教

 経営学部の澤田慎治助教(デザイン論)の2年生ゼミ生たちが、大学のイベントなどで学生スタッフたちが着用するジャンパー製作に取り組んでいます。7月7日には、同学部事務職員らに製作の狙いやデザインについて説明するプレゼンテーションも開かれました。ジャンパーは8月2日、天白キャンパス開催されるオープンキャンパスでデビューの予定ですが、指導してきた澤田助教に、実践の狙いを語ってもらいました。

――経営学部でデザイン論を教える狙いは何でしょう。

スタッフジャンパーのプレゼンを終えたゼミ生たちと澤田助教

スタッフジャンパーのプレゼンを終えたゼミ生たちと澤田助教

 商品のデザイン戦略が企業の経営の一翼を占める時代になっています。デザインの重要さを知り抜いた経営者でもある日産自動車のカルロス?ゴーン社長も、リストラの一方で、他社からデザイナーを引き抜いて中枢にすえました。大企業に限らずデザイン力は商品企画やマーケティングの面からも重要になっています。経営学部では形を学ぶデザインとしてよりも、問題を解決する手段としてのデザインを教えています。

――ゼミ生たちがジャンパーの製作に取り組んだのはどうしてですか。

 経済、経営学部は4月、新入生を対象に妻籠?馬籠デイハイクを行い、参加者全員にオリジナルTシャツを配りました。仲間意識を高める狙いもあります。私がデザインを依頼されましたが、気楽に着て街を歩ける、体育の授業にも利用できるなどと好評でした。PRの面があるからといって「MEIJO」の文字が強烈に目立っても、タンスに眠らせてはもったいないわけで、着る回数を増やすことも宣伝では大切です。その後、経営学部の事務局から、ゼミ生たちで運営するゼミナール協議会のスタッフたちが新入生歓迎行事などで着るジャンパーを製作してほしいという製作依頼がありました。デザイン作りのプロセスを学ばせるいい機会だと思い、私ではなくゼミとして引き受けしました。

――学生たちの反応はどうでしたか。

 はじめは、スタッフジャンバーの機能は何か、問題は何か、その解決方法はなどを調べさせました。その後、どんなデザインが利用目的にふさわしいか、ゼミ生14人全員にアイデアを出させました。「一般参加者とスタッフが識別できる」「スタッフの連帯感が強まる」「オープンキャンパスに訪れた高校生たちに経営学部のPRができる」など、出し合った意見をもとに、学生たちが導き出したキーワードは「つながり」。それらを元に、各自がデザインを行なってきました。最終的に、幹(経営学部)、枝(ゼミ)、葉(学生)を象徴する木と、名城大学のキャラクターでもあるライオンをデザインした案に決定しました。

――7月7日にはゼミ生たちが、学部事務長らにプレゼンテーションをしましたが、ジャンパーのプリント文字について、「漢字の『名城』がない」 「『KEIEI』はローマ字でよいのか」などの指摘もありました。

 学生たちは何を説明すべきかを十分考えての発表ができていました。総合政策部広報担当の方にも聞いていただきました。プレゼンを聞きに来る人がいるだけで学生たちの姿勢が変わり、学生たちには貴重な体験の場となりました。「MEIJO」の表記は、着る人のことを考え、胸の部分に小さく入れただけにとどめました。しかし、ジャンパーを見る人は、着ているのが経営学部関係者であると、直ぐに認知出来るデザインにしています。グレー地にグリーンの文字、イラストがプリントされたスタッフジャンパーが8月2日のオープンキャンパスでデビューできそうです。

――後期授業では、第2弾として、名城大学をPRするノベリティグッズの製作に挑戦すると聞きました。

 総合政策部広報担当の方に、大学が求めるノベリティについて話していただきました。学生たちは潜在的に豊かなアイデアを生み出せる力を持っています。ぜひ、名城大学のイメージアップにつながる商品づくりを通して、学生たちのデザイン力をさらにアップさせていきたいと思っています。

――昨年から名城大学の教壇に立たれていて、学生たちからどんな印象を受けますか。

 私は民間や行政機関でデザインの仕事をしてきました。自分の学生時代の体験からも、大学では、学生たちは黙って授業を聞くものだとばかり思っていたのですが、最初に担当した150人近い受講者の授業では、ザワザワと私語がやみませんでした。高校生と違って大学生なのだからと放っておいたのですが、2回目の講義でも私語が続いたため、注意しました。それで私語は止みましたが、今の学生たちは、言われればやるが、放っておくとそのままだという一面があることを痛感しました。もちろん私は、学生には大人として接するべきだと思っています。

――どうしたら「達人」は育っていくのでしょう。

 デザインの面でしか言えませんが、出来上がった作品をもう一度見直し、間違っていたら次のアクションを起こすことが必要です。隣の人の作品を見て、自分の作品に欠けているものがあったら、謙虚に学びながら自分のものにしていくことが大切だと思います。それは学生時代の学ぶ姿勢としてあらゆる面に共通することではないでしょうか。私も4月のデイハイクで配ったTシャツのデザインを、実は一部見直したいと思っています。

澤田 慎治(さわだ?しんじ)

京都市出身。京都工芸繊維大学卒。同大大学院工芸科学研究科造形工学専攻修了。 島根県産業技術センター勤務を経て2007年4月から名城大学経営学部助教。専門はデザイン、人間工学。富山県総合デザインセンターユニバーサルデザイン1等など、デザインに関する受賞歴も多い。38歳。

  • 情報工学部始動
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