育て達人第026回 只木 徹
「英語でプレゼン」に院生23人が挑戦 恐れず、どんどん話す勇気を
大学教育開発センター 只木 徹 助教(英語)
大学院生たちに、胸を張って英語で学会発表できる力をつけてもらおうと、「英語プレゼン特別講座」が11月、3週にわたって開かれました。入門編では23人が簡単な英語での意見発表に挑戦。指導した大学教育開発センターの只木徹助教にお話を聞きました。
――「英語プレゼン特別講座」には理工、農、経済、都市情報学研究科などの大学院生たち23人が参加しましたが、初体験の英語プレゼンに悪戦苦闘の院生も目立ちました。
「英語力を磨きたい学生はたくさんいるはず」と語る只木助教
言葉で説明するより、実践を中心にした指導に心掛けました。1回目は全員に、前に出てもらい、自己紹介も兼ねて、スクリーンの写真について説明してもらいました。英語でのプレゼンテーションも、やってみて初めて感じがつかめるものです。スポーツと一緒で、どんなに泳ぎの理論を学んでも、やはり水に入って体で覚えるしかありません。皆さん大変そうでしたが、度胸がついたと思います。それぞれの発表を聞きながら、良いプレゼン、悪いプレゼンの具体例も学ぶことができたはずです。
――どんな院生たちが参加したのでしょう。
「国際学会での発表に間に合わせたい」という院生もいましたし、「英語で学会発表する機会はないかも知れないが、いい経験になりそうだから」という院生もいました。全体として言えることは、英語プレゼンへの関心が予想以上に高かったという点です。理系の院生が多く、専門領域の内容は私も理解できない点もありましたが、「その領域では素人である私にも、あなたの研究がどういうものなのか説明して下さい」と求めました。まず、日本語としてまとまっていなければ、英語でも表現できないわけですから、思考能力を鍛える訓練にもなったと思います。当面、学会でプレゼンをする予定はなくても、国内外を問わず、「あなたはどういう研究をしていますか」と問われとき、わかりやすく、簡潔に説明することは大事です。
――学生や大学院生たちはこうした、「英語道場」的な場を求めているような気もします。
私もそう思います。今回は1週90分で、3週で計6コマ近くの実践講座を設定しましたが、もちろんこれだけでは足りません。各研究領域によって独特の手法も必要ですし、英語に磨きをけるブラッシュアップも必要です。さらに、学部生の皆さんも含め、国際舞台に向けて英語で発信したい、そのためにも英語でのホームページを作りたいといった要望もかなりあると思っています。職員の方々でも海外での会議出席や、意見発表の機会があります。本学では今年、多読ルームや英語オンリーの部屋「MiLC」(Meijo Independent Learning Center)もオープンしました。多読ルームは、蔵書スペースを広げたくても多読室自体が狭く、物理的に難しい状態です。プレゼン力向上も含めた、総合的な英語トレーニングセンターのような場が求められていると思います。
――母校である国際基督教大学(ICU)は特色の一つとして、英語教育の重視が知られていますが、やはり、相当鍛えられるのでしょうか。
ICUでは専攻に関係なく1、2年生は毎日2コマ、1週8コマもの英語の授業がありました。英語の成績がいい学生を集めて、英語が使いこなせるよう鍛えるシステムです。しかし、多くの大学では、英語の授業は、1年生で週2コマ程度学ぶだけです。初?中級レベルの英語が使えるようになるには2500時間の学習が必要と言われていますが、高校を卒業するまでの英語授業時間は1000時間に達していません。大学で週2コマの90分授業を受けても1年で90時間。2500時間にはほど遠い数字です。専門教育との兼ね合いもありますが、1、2年生での英語教育の充実に力を入れるべきだと思います。
――英語力を磨くということは、どんどん話す、使うということでもあるわけですね。
そうです。私もマンチェスター大学留学でそのことを実感しました。移民が多いマンチェスターでは、生活して生きていくためには、間違いがあろうと、英語を話すことで人々は毎日、毎日を勝負していると感じました。留学するまでは、英語について自分ながらずいぶん偏見を持っていました。文法をしっかりマスターしたうえで、英語が書けなければ英語は話せないのではないか、という思い込みもその一つでした。しかし、現実には、どんなに文法をマスターしたつもりでも、実際に話したり、書いたりすると、わからないことが次々に出てくるのです。日本の英語教育で欠けているのは、例え不完全であっても、使わせる環境づくりがなされていない点だと思います。
――名城大学でも世界的なグローバリゼーションに対応して、「国際化」を掲げています。
私は全学共通教育が始まった2005年度に本学に赴任し、英語教育の改革に携わってきました。ばらばらだったテキストやシラバスの統一化、授業改善のために試行クラスの設置、非常勤講師を中心とした教員研修などです。しかし、繰り返しになりますが、本気になって学生たちの英語力を磨くには、授業内容の充実はもちろんですが、授業時間数を増やすためのカリキュラムの再検討や、英語教育の拠点となるセンターの設置など、全学的な意識改革と体制づくりが必要だと思います。
――学生たち接していてどんな印象をお持ちですか。
私は週8コマの授業を担当しています。名城の伝統とも言われていますが、まじめで、努力する学生が多いと思います。磨けば光る学生たちがたくさんいます。そうした学生たちをどう磨いてやれるのか、まさに私たち教員に突きつけられた課題だと思います。
只木 徹(ただき?とおる)
東京都出身。国際基督教大学卒、マンチェスター大学大学院博士課程修了。哲学博士(応用言語学)。小、中学校、高校、大学?カレッジ(イギリス)、塾、予備校での教師経験を経て2005年から名城大学勤務。大学教育開発センター助教として全学共通英語を担当。専門は言語教育、教師教育など。50歳。