育て達人第064回 渡辺 俊三
経済学部10周年、グローカルな挑戦へ 人生の財産となる学生生活を
経済学部長 渡辺 俊三 教授(中小企業論)
経済学部は3月、学部開設10周年の記念誌「天白より世界へ」を刊行しました。1949年に新制大学として開学以来の歴史を積み重ねた商学部からバトンを引き継いでの10年です。新たな挑戦への決意も含め、渡辺俊三学部長にお話を聞きました。
――経済学部は開設10周年を迎えました。学部長としての感想をお聞かせ下さい。
「経済学部卒の達人たちが本格的に活躍するのはこれから」と語る渡辺学部長
学部長として10周年を迎えたのはたまたまの巡り合わせですが、10年を振り返ると、引退された先生、新たに着任された先生も相次ぎ、全体の3分の1の先生が入れ替わり、年齢的にはかなり若返ったと思います。また、学部のスタートとともにフィールド調査の実践が積み重ねられてきました。国内調査、国外調査の2本立てですが、毎年10数人の教員が学生たちのフィールドワークを指導して取り組む経済学部は全国的にも珍しい特色だと思います。
――個人的な立場としてはどうですか。
私自身も名城大学に赴任したのは10年前の2000年4月でしたので、10年の経過は感慨深いものがあります。私の研究分野は大きく分けて、日本の中小企業政策の形成過程、イギリスの中小企業政策、地域産業集積の三つですが、10年間を振り返ると、研究成果は亀の歩みのようであったかも知れません。私は、研究者は短距離ランナーというより長距離ランナーではないかと思っています。ある程度時間をかけて質の高い研究を継続することに意義があると思っています。自己PRになりますが、近々『イギリスの中小企業政策』という本を、同友館という書店から出版する予定です。この本は私にとって3冊目の単著になります。
――経済学部10周年記念誌として「天白より世界へ」が刊行されました。
記念誌には名城大学からの研究成果を発信したい、ローカルに考えグローバルに行動したいという“グローカル”を目指す意欲が込められています。30人の先生方には日ごろの研究や教育の実践ぶりを、論文スタイルではなくエッセイ風に書いていただきました。この本を読めば、経済学部教員の顔ぶれがいかに多士済々であるかがわかると思います。経済学部の卒業生や在学生の父母らにも配りましたが、学生たちからは「普段、授業を受けている先生たちがどんなことを考えているかがよくわかった」という声も届いています。
――中小企業論が専門ですが学生たちの関心はどうですか。
就職活動においても学生たちはまずは大企業に挑戦したがります。最初から中小企業を希望する学生はなかなかいないように、科目履修においても、残念ながら中小企業論を積極的に勉強してみようという学生は少ないのが現状です。しかし、よく考えてほしいのは、日本の企業の圧倒的多数は中小企業であるということです。大企業の製造業、デパート、金融機関で働くことになっても、連携先、取引先、融資先のほとんどは中小企業です。中小企業について学ぶことはどんな所で働くにしろ大きな意義があることをぜひ理解してほしいと思います。
――企業を回ると卒業生の活躍も実感するのでは。
そのとおりです。中小企業政策についての調査や、名城大学地域産業集積研究所のメンバーとしての調査もあり、多くの企業に足を運んでいますが、名城出身者の活躍は肌で感じています。経済学部は学部ができてまだ10年なので、「経済学部卒」となると最年長でも30歳代の前半です。幹部としての活躍はこれからだと思います。しかし、「私も商学部の何年卒です」と、社長さんにあいさつされるケースはたくさんあります。商学部の歴史の重みを痛感します。ただ、社長さんたちの出身学部で多いのは何と言っても理工学部卒です。学部の歴史や規模からして当然だと思います。
――学生たちへのエールをお願いします。
入試が多様化したせいか、いろいろな層の学生たちが入学してくるようになりましたが、名城大生は総じてまじめだと思います。自分の人生を振り返っても大学生時代は一番いい時代でした。勉強に集中するのもいいし、サークルやスポーツに一生懸命になるのも素晴らしいことです。大学時代に培ったことが自分の一生の財産となるよう、悔いのない学生生活を送ってほしいと思います。
渡辺 俊三(わたなべ?としみつ)
静岡県出身。信州大学人文学部卒、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。2000年から名城大学経済学部教授。1995年、2003年、英国キングストン大学で各1年間、同国の中小企業政策の現状を研究。2009年4月から経済学部長。63歳。