大学概要【2020年度実施分】"E=mc? for SDGs
(Empowerment = movie × creative conception for Sustainable Development Goals)
自らの着想を映像で発信できる、「持続可能な開発目標」(SDGs) のための人づくり"
経済学部
(Empowerment = movie × creative conception for Sustainable Development Goals)
自らの着想を映像で発信できる、「持続可能な開発目標」(SDGs) のための人づくり"
2008年にスタートした谷村ゼミでは、「持続可能な開発目標」(SDGs)に先立つ「ミレニアム開発目標」(MDGs: 2000-15年)のもと、国際開発?協力に関心を寄せるゼミ生がPBL(Project-Based Learning)形式で主体的に貧困削減や開発教育などの課題を探究してきました。そのようなゼミでの活動をベースに、2016年度からは、国際機関や公益社団法人のビデオ?コンテストなどへの作品づくりにも取り組んでいます。
関連リンク
ACTIVITY
子ども、貧困?格差、教育をテーマに
2020/07/27
2020年春、谷村光浩ゼミでは、地球市民として〈自らの着想を映像で発信できる、「持続可能な開発目標」(SDGs)のための人づくり〉プロジェクトを始動。開発課題について、文献研究はもとより、現場で活躍される諸氏へのヒアリングなども通じて学びを深めながら、ブレインストーミングで練ったメッセージを、“伝わる”映像へと協働でまとめる力を鍛え合います。
今年度の共通テーマは、「子ども」「貧困?格差」「教育」。これらのキーワードを軸に、最近の「ポスト?コロナ」といった観点も踏まえながら、考察を進めてまいります。
2020年10月5日 国連ハビタット オンライン?イベント 世界ハビタット?デー 2020 「ウィズ?コロナ時代のまちを考える」 受講報告
2020/10/23
毎年10月の第一月曜日は、「世界ハビタット?デー」。この日、国連ハビタット(UN-HABITAT)福岡本部が主催されたオンライン?イベント、「ウィズ?コロナ時代のまちを考える」を受講させていただきました。今年は、新型コロナ?ウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大のなか、アジアやアフリカでの事業運営に苦心される専門家の方々のご報告等を拝聴いたしました。
■眼前の課題への対処に加え、構造的問題の解消にも粘り強く取り組むこと
榊原えれ奈 (産業社会学科3年)
オンライン?イベントは、アントニオ?グテーレス国連事務総長が「世界ハビタット?デー」に寄せられたビデオ?メッセージで幕が開きました。「今年は特に持続可能な都市開発の原動力として、住宅が果たす中心的役割に焦点を当てています」とのお話に続けて、新型コロナ?ウイルス感染症対策との関連では、「清潔な水や衛生設備へのアクセスを確保すること」の重要性を指摘されました。また、「感染症があらわにした脆弱性と不平等」には、連携した取り組みが求められるとも強調されました。
国連ハビタット福岡本部長の是澤優氏は、開会のご挨拶のなかで、COVID-19がいずれの持続可能な開発目標(SDGs)にも深く関わることを概説されました。そして、この感染症が、「ヘルスケア」「オープンスペース」「インターネット」等へのアクセスにおいて、また「リモート?ワーク」への対応力において、不平等を顕在化?拡大させている情況をとらえ、もとの状態にもどすといったことに留まらない、Build Back Betterという復興支援の方針を提起されました。
国連ハビタット海外事務所からの現場報告では、スーダン事務所長の横田雅幸氏が、「まちづくり?復興支援の現状と課題」に関し、各国からの協力が緊急物資?人道支援中心で、まだ中長期的に都市の持続可能な発展を支える政策?計画等が十分に整っていないところに新型コロナの感染が広がったこと、さらにはそれを超える危機―物価高騰、洪水被害、和平問題等―に直面しているという実情を解説くださいました。「感染症対策?医療施設」の脆弱性だけでなく、「政府」「経済」「都市基盤」の脆弱性にも目を向けることの重要性を指摘されました。
スーダンからの報告をうかがうなかで、COVID-19だけでなく、すでに深刻化している「地球環境問題」「洪水」などが脆弱な人々の生活を同時に揺るがし、まちづくりを一段と難しくしていることを実感しました。土地の権利を得ることによって、人々は各種サービスへのアクセスも手にできると思われ、「感染症」という眼前の課題への対処に加えて、経済?社会の構造的諸問題の解消にも粘り強く取り組むことが大切であると改めて認識しました。
■私たちにも参考になる事例が見出せる: まちに描かれたカラフルな絵
熊崎優梨香 (経済学科3年)
国連ハビタット海外事務所からの現場報告にて、ナイロビ本部の寺田裕佳氏からは、南スーダンやソマリアといった近隣諸国からケニアに流入する難民、ならびに、首都ナイロビのインフォーマル居住地?経済についての概要、さらには、ケニアにおける新型コロナ?ウイルス感染症対策の具体的な取り組みを教わりました。
ケニアでは、マスクをしていなければ高額な罰金が科されるため、ほぼすべての人々がルール通りに行動しているとのこと。都市交通に関しては、バスは半数以下の人数と定められ、クルマではなく自転車の利用を促すため、歩道寄りの1車線を可動式の植栽プランターで仕切り、自転車専用レーンに切り替えるといったひと工夫。高密なマーケットは、ソーシャル?ディスタンスを保てるように、大きなオープン?スペースに移設。インフォーマル居住地では、特に手を洗える場所の整備が進められるとともに、どのような行動が感染拡大を防ぐことにつながるのかを建物の壁面に大きく描いて啓発。いずれも、画像を通じて分かりやすく説明くださいました。
国連ハビタットとしては、地理情報システム(GIS)を用いて、保健センターの位置、人口密度の高い地区などに関する情報を提供されてきたそうです。また、「水」をめぐっては、過酷な環境でも持続的に用いることができる技術を、日本の民間部門ともオンラインで連携して探っているとのお話もありました。「新型コロナ」という難問へのチャレンジが続くなか、昨今のICTの進展は新たなつながりも創出し得ると、寺田氏はポジティブにとらえていらっしゃいました。
ケニアでのさまざまな取り組みをうかがいながら、私たちの都市?地域社会にも参考になる事例がいくつもあるように思いました。特に、大きな壁にインパクトのある色鮮やかな絵 [手洗い+マスク+ソーシャル?ディスタンス=NOコロナ] を描き、「まち」として、COVID-19の感染拡大を抑える活動の進め方には、“今まで[スマホ]とは違った新しさ”を感じました。
今回のオンライン?イベントを通じて、「まち」は実に多様で、各地で複合的な諸問題にさまざまな取り組みがなされていることを学びました。国際協力の最前線からのご報告を通じ、改めて広く「政府の役割」を議論する必要があるようにも感じました。
[国連ハビタット福岡本部 YouTubeページより]
https://www.youtube.com/channel/UC3M8xa98DzxY6NvztNTFC1g
オンライン講演会 ハビタットひろば 「福岡の企業技術でケニアの難民居住区に安定した水を!」 受講報告
2020/12/01
2020年12月1日、国連ハビタット(UN-HABITAT)?福岡県国際交流センター主催のオンライン講演会に参加しました。国連ハビタットは、ケニア?トルカナ県カロベイエイ新居住区にて「持続可能な開発事業を通じた難民と受け入れコミュニティの統合強化事業」を展開されています。今回は、本プロジェクトにおいて「雨水を地下に貯水する施設」の整備を主導されたナイロビ本部の寺田裕佳氏、福岡本部の星野幸代氏、そして技術的な支援に当られた株式会社大建(本社: 福岡市)の松尾憲親氏?河野新司氏より、その住民参加型共同事業の概要をうかがいました。
■「安全な水を手に入れる」事業をひとつの起点に
成瀬瑠里子 (経済学科2年)
国連ハビタット福岡本部と同じ福岡市に拠点をおく(株)大建は、地下に設けた砕石層に雨水を貯水する?ためとっと?という工法を培われてきました。「短期間の簡単な工事で、大量の雨水を、わずかなメンテナンスのみで飲料水並みの水質で貯水し、使用できる」仕組みになっています。2012年、?アジアの都市連携による環境技術専門家会議?(国連ハビタット主催)にて、その手法をプレゼンテーションされ、2014年からは国連ハビタットとの連携事業として、ラオス、ベトナム、そしてケニアのまちで、水の供給-いずれも100tをこえる貯水施設づくり-に尽力されています。
国連ハビタットが?ためとっと?を採用された理由は、(1)工事費が安価で、(2)工事期間が短く、(3)材料は現地で入手でき、(4)特別な施工能力が不要で、現地の方々で工事を進められ、(5)施工後の管理も簡易という5点とうかがいました。今回のケニアでのプロジェクトでは、(株)大建の方々は、現地にて4日間、施工上の技術指導にあたられ、工事を完了されたそうです。
?ためとっと?の作り方は、確かにとてもシンプルでした。まず、設置予定の場所-底面9m×14m、深さ2m程度-を事前に掘削。次に、貯水に不可欠な遮水シート(現地調達)の接合作業が、丁寧に進められます。掘削した場所にこの遮水シートが敷かれた後、砕石が投入されます。この砕石投入時には、遮水シートを傷つけないように、すべて人力で行われたそうです。そして、集水管を取付け、最後に砕石層の上部に埋戻土をかぶせて作業完了となります。
ケニアでの施工にあたり、思うように資材がそろわないなかで、(株)大建の方々は、事業後の持続的な発展を視野に、現場で「できることを考えながらの作業はいい経験になりました」とお話しされていました。国際協力の現場とは、まさに学び合いの場でもあると強く感じました。また、国連ハビタット福岡本部の星野幸代氏は、「この住民参加型プロジェクトは、水の供給といったことだけではなく、それまで水を手に入れるために多くの時間を費やしてきた女性や子どもの労苦を軽減し、教育などの機会の実質的な確保につながるもの」と補説くださいました。ひとつの事業が、主たる問題の解決だけでなく、副次的に他の根深い課題の解決にむけた一歩となり得るという示唆も大変印象深く、大いに学ばせていただきました。
ハビタットひろば 「福岡の企業技術でケニアの難民居住区に安定した水を!」 -砕石投入状況-
右上: 国連ハビタット福岡本部本部長補佐官 星野幸代氏
右中: (株)大建 代表取締役 松尾憲親氏[右]、プロジェクトリーダー 河野新司氏[左]