大学概要【2017年度実施分】実践的な取り組みをするゲストスピーカーの講義?特論への招聘
理工学部
講義?特論の中で特に実践的内容を扱う回について、その内容に関する一線級の実務家をゲストスピーカーとして招聘し、講義の流れに沿った「実践的取り組み事例や立場」に関する情報提供を行ってもらうと共に、担当教員との総合的討論を行う。
対象科目は、建築学科の2~3年生の講義科目、または修士課程1年生の特論科目(非履修生や2年生にも声をかける)などで、常勤教員が担当する科目とする。
なお、本事業は2年目であり、昨年度は4名を招聘した。
ACTIVITY
「屋根神様のある長屋の見学会等」を開催しました
2017/10/11
■市原正人氏(市原建築設計事務所主宰 ナゴノダナバンク代表)
建築学科の4年生科目「建築デザインIII」の第9回(5月30日:火)に市原正人氏をお招きし、「屋根神様のある長屋の見学会等」を開催した。市原正人氏はこの住宅のある那古野地区で設計事務所を主宰するとともに、この地区のまちづくり活動を行う建築家である。
この見学会では、住宅内部の建築特性と状態の解説とともに、この住宅の歴史的経緯、現在の所有関係等の情報提供をいただいた。また見学後、この住宅が立地する那古野地区について、街歩きをしながらまちの歴史や住民等によるまちづくりの取り組みについての解説をいただいた。
なお、「建築デザインIII」では次の2課題を実施しており、共に那古野地区に関わるため、市原正人氏には上記見学会のみならず、2つの課題の作品講評会にも参加いただき、熱心なご指導をいただいた。
○第1課題:那古野地区のまちづくり「フィールドワーク?リノベーション演習」(主担当:能村先生)
○第2課題:屋根神様のある長屋の「再生計画」(主担当:坂本先生)
なおこの科目の成果は、11月に那古野地区で開催されるまちづくりワークショップに出品の予定である。
建築構造系科目で「寺院建築のしくみと工夫」を講演いただきました
2017/12/13
■溝口明則先生(元名城大学教授)
2017年7月11日(火)4限の建築構造デザインIにおいて、溝口明則先生(元名城大学教授)により「寺院建築のしくみと工夫」と題して講演会が開催された。履修登録学生数165名。
3年次履修科目の「建築構造デザインI」では鋼構造に対する安全性を検討し、鋼構造建築物の理解を深めることを主目的にしているが、鋼構造のみならず構造システムに対する理解を深めるため寺院建築の架構についてご講演頂いた。なお、本ご講演内容の一部はJSCA(一般社団法人日本建築構造技術者協会)においてご講演された内容であり、建築構造技術者から好評だったものである。
ご講演内容
まず、近代以前の日本の木造建築物に対して、数年~数十年もつことを想定した建築物と、千年を超える建築物とを比較しながら問題点(主として雨)と工夫についてご説明頂いた。更に寺院建築の架構に対して6つの項目(瓦を葺く,二軒,組物,金属コーティングと金属板の被覆,礎石柱,基壇)に着目して詳しく説明頂いた。具体的には瓦の重量に対する柱頭や組物の工夫についてはパルテノン神殿と平等院鳳凰堂を比較しながら、二軒や組物については、飛鳥様式と和様の柱間や平行垂木と扇垂木の役割の差等を比較しながらご説明頂いた。また、最後に古代と中世の丸桁の支持方法の発達についてもその意味するところをご説明頂いた。
3年生製図課題でゲストクリティークを開催した
2017/12/14
■鈴木えいじ氏(大建設計株式会社 代表取締役)
建築学科の3年生科目「建築デザインI」の第15回(7月21日:金)に鈴木えいじ氏をお招きし、同科目の第2課題「インターナショナル?スクール」の最終講評会において、ゲストクリティークを行っていただいた。
鈴木えいじ氏は、2010年に「すごろくハウス」で中部建築賞特別賞、2012年に「すごろくオフォス」で新建築の表紙を飾るなど、数多くの斬新な作品と受賞歴をもつ建築家である。
第2課題「インターナショナル?スクール」は、名古屋市北区を敷地として想定した、幼稚園6クラスと小学校12クラスをもつ約4000㎡の学校である。ここでは、日本に駐在する外国人の児童や帰国児童たちが学ぶことになるが、日本人向けの学校の基準にしばられない自由な発想が求める。しかしながら、履修者は将来一級建築士を目指す80名であり、芸術性とともに実現性、そして教育環境としての質が求められる。
この点に関し各作品に対し、鈴木えいじ氏から学生に鋭いツッコミと指摘が繰り広げられた。また、最後に総括として、建築のあり方や設計者としての心構えが熱く語られた。
講評を受ける作品例
なおこの課題における優秀作は、8月にオープンキャンパスにおける優秀作品展で展示された。
また、2017年12月12日(火)~2018年1月14日(日)、名古屋都市センターで開催される「建築系愛知10大学共同企画展」で展示される。
建築実践特論で、設計者による「ドーム前キャンパス」の案内と解説
2017/12/20
■藤田雅義氏(日本設計 建築設計群 主管)
博士前期の建築学専攻では、大学院生が社会に出た時の実践力向上のため「建築実践特論」を開講し、その中の課題の一つに「プロジェクト工学」を設けている。建築学科(学部)のカリキュラムは、建築設計や施工管理に関わるスキル養成を中心に組み立てられているが、実務社会においては建築が中核の「プロジェクト」として進められ、その実態の理解?習得は実践力向上に不可欠である。
この「プロジェクト工学」は2017年7月28日(金)に、4回分の集中講義型で行なわれた。最初に本特論の担当講師である鈴木利明先生 (元?日本設計 名古屋支社長)より、プロジェクトの基本的なプロセスと設計者選定方式の種類、これまで取り組んだプロジェクトの紹介があった。
そして、続いて今回のゲストスピーカーである藤田雅義氏より、自作の紹介、および「ドーム前キャンパス」のコンセプト、設計者として選ばれるまでのプロセスや計画概要が語られた。
引き続き「ドーム前キャンパス」に会場を移し、キャンパス計画の具体的な設計内容の説明があり、そののちキャンパスの見学が行われた。
ドーム前キャンパスにてキャンパスの解説
見学後、提案技術などのより詳細な内容が紹介され、大学の施設利用窓口の小川喜弘氏による利用状況や利用者の声の紹介を交えながら、キャンパス計画全体について熱心な質疑が行われた。
建築計画IIで将来の建築家の卵に「住宅防犯」を講義
2018/01/24
佐藤悦雄警部補(愛知県警察本部 生活安全総務課)
建築学科の2年生科目「建築計画II」の第15回に(1/9)に同氏を招き、『住宅防犯-愛知県の犯罪発生の状況と住宅設計』と題し講義をしていただいた。
冒頭に愛知県の犯罪情勢が紹介され、愛知県が住宅含む侵入盗が全国ワースト1位!であると告げられると、学生に動揺の声があがった。実際事前に、自分自身、親戚?知人、近所の人で泥棒に入られた人がいるかを尋ねたたところ、約1/3の学生がYESと答えており、これが実証された格好になった。
引き続きの講義では、前半は、住宅対象侵入盗の手口を、犯行現場の写真などで紹介された。また、防犯の4原則である「時間」「光」「音」「(地域の)目」が説明された。
後半は、防犯環境設計の4要素である「監視性の確保」「接近の制御」「領域性の確保」「対象物の強化」が説明され、「対象物の強化」の手段としてのCP部品が紹介された。
授業後に、学生の質問を募ったところ、21の質問が出され、講師から丁寧な回答が寄せられた。それらの中には、「犯人を捕まえる時の犯人のリアクションはどんな感じですか?」、「防犯面の錠とかまでも設計で考えるのですか?」、「警察学校は大変でしたか?」といった質問もあり、防犯や警察が学生にとって一気に身近な存在になった様子が伺えた。
トヨタの技術が住宅に! プレキャストコンクリートの基本
2018/01/24
加藤泰浩氏(トヨタT&S建設?設計部?部長)
建築学科の2年生科目「建築各種構造II」の補講として(1/16)に同氏を招き、『PCa(プレキャストコンクリート)の基本~適用事例』と題し講義をしていただいた。
高品質の工業化部材として我が国に定着しているプレキャストコンクリートについて、基礎?具体例?将来展望について、1949年の日本最初の実用事例の紹介を含め、歴史~現在の最新の事例について解り易く解説をしていただいた。特に、講師の勤務先がその先駆的な企業であることから、愛知県内での事例を含めてビジュアルに説明をしていただいた。また、熟練工不足や省エネなど今後の建設環境との関わりについて興味ある話題を提供していただいた。
学生は補講期間であったが熱心に聴講し、約120名の参加があった。