本年度をもってご退職される藤田衆教授(前学部長)と二神真美教授(現学部長)の最終講義が2023年1月26日(木)に開催されました。「最終講義」とは、大学教員にとっての「研究人生と教育人生の一つの節目」です。研究者として何に興味をもち、どのような探究を重ねてきたのか、また教育者としてその専門性を学生たちにどう伝えてきたのかについて振り返り、これまでの研究人生と教育人生を後人に伝える大切な講義です。
対面で開催された最終講義には、藤田ゼミ、二神ゼミ生をはじめとする本学部生だけではなく、名城大学足球竞彩网_英皇娱乐-任你博首页推荐員、教職員、そして学外の一般の方多数が参加をしお二人の最後の登壇に耳を傾けていました。
【登壇教員紹介】
藤田 衆 (FUJITA Shu)
名城?学外国語学部教授
専?分野:フランス文学
担当科目:「フランス語入門Ⅱ、Ⅳ」、「フランス語初級Ⅱ、Ⅳ」、「フランス語中級Ⅱ」、「フランス語応用Ⅱ」、「ヨーロッパの文学と社会」
研究テーマ:フランス19世紀文学(Gérard de Nerval)
二神 真美 (FUTAGAMI Mami)
名城大学外国語学部教授
専門分野:地域研究?国際観光学
担当科目:「アメリカ地域研究」、「日本のツーリズム」、「異文化理解」、「多文化共生論」、「国際フィールドワークI(英語圏)」
研究テーマ:持続可能な観光指標(Sustainable Tourism Indicator: STI)、持続可能な観光の国際認証(Sustainable Tourism Certification: STC)、持続可能な開発目標(SDGs)と観光
【最終講義内容】
藤田衆先生:「19世紀の作家 Gérard de Nerval」
藤田衆教授が最終講義に選ばれたのは、ご自身の研究人生でとりわけ深くかかわってきた19世紀のフランス作家ジェラール?ド?ネルヴァル (Gérard de Nerval, 1808-1855) です。講義冒頭、作家の生涯を年表で示しながら藤田教授は、母親の顔を知らずに育ったネルヴァルの原体験、および晩年に発症した「狂気の発作」について触れたあと、具体的な作品分析に入りました。戯曲『ハールレムの版画師』については、役者さながらの「語り」で注目すべき場面を朗読し、作品に込められている神話性について説明されました。
続いてネルヴァルの小説『東方紀行』に話を移した藤田教授は、一般的に植民地主義的視点を免れない当時の書物において本書が例外的であるとするエドワード?サイードの主張に触れ、ヒジャブやブルカで顔を隠しながらも町中を所かまわず闊歩する中東の女性たちのようすに、西欧にはない独特な自由を見出していたネルヴァルの優れた感性を指摘されました。
講義終盤には『シルヴィ』と『オーレリアあるいは夢と人生』という晩年の小説に触れ、前者については主人公に顕著な女性とのミスコミュニケーションと母親不在のネルヴァルの原体験との関係性、後者については狂気の発作や幻覚に苦しむ主人公像に関与したとされるネルヴァル自身の精神病の影響を指摘し、講義を締めくくられました。
文学テクストの精読と緻密な分析によってネルヴァルという作家とその作品の審美性を包括的に論じた素晴らしい最終講義でした。(文責:柳沢)
二神真美先生:「SDGsと観光:サステナブルツーリズム推進に向けた国内外の動向」
二神真美教授は、ご自身の研究人生と教育人生の双方に深くかかわった「サステナブル?ツーリズム」について講義されました。講義冒頭、観光研究転向のきっかけとして、それまで中心的に行ってきたアメリカのアパラチア地域研究について説明されました。当時「貧困のポケット」と称されていたこの地域の再開発について研究されていた二神教授は、「エコツーリズム」など観光学的な学問領域への関心が強まり、現在取り組んでおられる「観光の持続可能性」というテーマへとつながったそうです。
続いて、サステナブル?ツーリズムとSDGsとの親和性について話は進みます。SDGsが掲げているさまざまな目標のなかに観光の持続性に関する文言が散見される事実を指摘し、その要因として「認知度のアップ」、「ESG投資(環境や社会に配慮した企業への投資)」、「コロナ禍による価値観変容」を紹介されました。とくに世界規模のアンケートデータによる2021年以降の旅行トレンド予想で、サステナブルを意識した旅行が6位にランクインしている点は、コロナ禍がサステナブルという価値観を後押ししたことを示すとても興味深いものでした。
講義終盤、サステナブル?ツーリズムをけん引している二つの国際組織「国連世界観光機関 (UNWTO)」と「グローバル?サステナブル?ツーリズム協議会 (GSTC)」を紹介されました。国連を母体とするUNWTOについては、当機関が2004年に発行したきわめて包括的かつ体系的な指標マニュアル『観光地域のための持続可能な開発指標』との出会いがその後の二神教授の研究を大きく前進させたそうです。また、より非政府的なGSTCについては、指標基準がSDGsとの関連性に重きを置いている点を指摘しつつ、様々な観光ガイドラインへのその汎用性について触れ、最後に観光におけるサステナブルの重要性を再度強調して講義を締めくくられました。
門外漢の私にも大変理解しやすかったのはもとより、二神教授の熱意のこもった語りも相まって、長きにわたる研究人生と教育人生が凝縮されたかのような濃密な最終講義でした。(文責:柳沢)
藤田先生?二神先生、どうもありがとうございました!
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