大学概要【2019年度実施分】橋の模型づくりを通じたエンジニアリングデザイン教育
理工学部
〈ジャパンスチールブリッジコンペティション2019(JSBC2019)に向けて〉
理工学部の学生には,より実践的で応用力のあるエンジニアリングデザイン力が求められています.本活動は,学生自身が橋梁の設計,製作と架設を行い,ものつくりの真の楽しさを経験します.この取り組みの目的は以下のようになります.
● 模型製作を通じて,基本的な工学知識の応用力,問題解決能力を養う
● 参加学生の協調性を育む
● 学生や参加者間の交流を図る
● 製作の過程における遂行能力を通じて,社会人基礎力を育む
学生は過去の大会で得た反省を上級生から継承し,さらに新しい創意工夫をこらして夏に開催される日本鋼橋模型製作コンペティションJSBC2019に参加します.10回目となる節目の大会で,総合優勝を目指します.
関連リンク
ACTIVITY
ブリコン2019の活動が始動!
2019/04/18
ジャパンスチールブリッジコンペティション,通称「ブリコン」2019がスタートしました.
4月上旬,参加者を募るための初回説明会を行いました.実施責任者の渡辺孝一准教授からプロジェクトの主旨説明がありました.続けて,上級学生(4年立枕遼祐,渡辺研究室所属)から昨年度の橋模型を使った紹介があり,参加した学生から活発な質疑がありました.プロジェクトの趣旨を理解し,賛同した社会基盤デザイン工学科の学部3年生ら10名(男子学生6名,女子学生4名)と渡辺研究室の学部4年生8名(男子学生6名,女子学生2名)がJSBC2019に参加することになりました.これから本格的に活動を進めていきます.
安全保護具を装着し,初めての金属加工に挑戦
2019/05/07
ブリコンメンバー2回目の顔合わせで少し落ち着いた様子の中,金属加工のための機械工具の安全指導と加工体験を行いました.ノコギリや,キリなどの木工用工具は比較的に使用経験がある学生もいるようでしたが,金属を加工するための電動工具は,初めての学生が多く,皆が真剣な眼差しで渡辺准教授の指導を聞きました.メンバーらは工具の誤った扱いによる危険性を理解したのちに,鋼材の切断,孔明け,バリ取りなどを一人ずつ全員体験しました.工具の振動や加工音に驚いている学生もいましたが,他のメンバーの手元をよく観察し,使いこなすためのコツを得て,これから始まる本格的な橋製作への期待に胸を膨らませました.GW明け頃に今年の橋模型に関するルールが公開される見通しのため,加工の実践を積み重ねると同時に,ルールに沿った橋模型製作の設計に着手していきます.
金属加工体験の後,上級生から昨年の橋模型で工夫したことについて,体験談が伝えられました.その後,渡辺准教授から今年取り組む橋について理解を深めるため,構造力学を応用した連休中の課題が出されました.機械加工中はきらきらしていた表情がこわばって,ため息をつくメンバーもいましたが,今後の成長が楽しみです.
ブリコンルール公開前,まずは出来ることから始めています
2019/06/04
ブリコンの大会ルール公開が待ち遠しい5月上旬,事前に出来ることから取り組みを初めています.ブリコンでは,橋の重さを軽くすることと,錘(おもり)を載せたときに規定のたわみ(橋の変形の程度)に近づける必要があります.適切な材料を見極めるため,様々な断面の鋼材料を対象に,「力と変形と重さのバランス感覚」を身につける計算課題に取り組みました.事前に課題を配布しておき,今回は上級生による解説と質疑応答を行いました.普段の講義では教員に当てられる側の上級生が指導側に立って,なんだか意気揚々です.解答の説明を指名された3年生はかなり動揺した様子でしたが,真剣に解説を聞くことで,解説する側も解説を聞いた側も,構造力学の知識と応用力をまた一つ身に着けました.
その後,実験棟内において,半自動溶接の体験を行いました.溶接は例えとして,デコレーションケーキのトッピング作業に似たところがありますが,初めての経験ながら筋の良い学生もいて,橋の製作精度の向上が期待できそうです.
ブリコンルール発表!橋の設計が始まりました
2019/06/21
ようやく今年のJSBC2019公式ルールが公開されました.メンバーが一同に会するなか,全員にルールブックが配布されました.その内容について,上級生から注意点の説明がありました.大会でルール違反により想定外の失格とならないよう,みながルールブックを熟読して,規定の理解をしました.
ルール公開と同時に,今年度大会のチームのリーダーと副リーダーおよび,設計担当が決まりました.今年は全て立候補で速やかに決まりました.リーダーを筆頭に良いチームワークが期待できそうです.設計担当も決まりました.それぞれ役割を分担したメンバーは,効率的に製作に取り掛かれるように名城カレンダーを横にらみしながら,日程調整に入りました.
今年度のチーム作業のスタイルとして,作業日は全員参加で集中的に作業しON-OFFを明確にすることで,休みは各自が休憩を取る工程を全体方針としました.7月下旬から前期の定期試験も控えているため,学業に支障が出ないよう配慮しながら,いよいよ本格的に橋模型作りがスタートします.
一方,上級生チームも3年生チームに負けないよう活用を進めています.昨年大会の経験から橋製作のコツはつかんでいるので,まずはデザイン立案とFEM解析を優先して進めていきます.
ものづくりは順調に進んでいます
2019/07/09
今年度のJSBC2019ルールブックを精査した後,3年生チームは自分らの橋の設計図を苦労の末完成させました.その図面をもとにチーム一丸となって部材製作を進めています.作業は平日,講義がない午後の時間を利用して,原則としてチーム全員参加です.
上級生のアドバイスをもらいながら,一つのパーツに対して,素材の罫書き,切断,バリ取り,孔明け,溶接の各作業に対して,それぞれ自分の得意な作業を担当し,効率的に分担しながら完成させています.こうした分担作業のあり方はこれまでにないものです.
7月に入って前期の定期試験が迫るなか,集中してものづくりに取り組んだ結果,7月上旬に,仮組み(完成前の全体形状を確認する作業)を行うことが出来ました.仮組みの結果,一部のサイズが不適合となる要修正箇所が判明したことから,軌道修正して再度,製作に取り組むことになりました.完成までにはまだ相当の時間が必要です.
一方の上級生チームは,製作メンバーの誰か一人が都合により作業できない場合に,全体の作業が中断するという状況を回避するため,一人ひとりが各部材を素材から完成まで担当する方針をとっています.これは昨年度のブリコン参加経験により,メンバー全員が加工作業を一通り行うスキルが身についているからこそ成し得る技ですが,担当によってそれぞれ製作精度が異なる危険性も伴うことから,全員気が抜けない製作活動が続きます.特に3年生チームの製作が快調のため,上級生としてプレッシャーがかかります.今後の追い上げが楽しみです.
大会を控え,夏休みを利用してものづくりに集中
2019/08/26
7月末の定期試験のため,ものづくり作業は一時中断していましたが,試験も終わり,いよいよ活動も大詰めとなりました.3年生チームは,これまで順調な工程で進めて例年になく,早めに完成かと思われましたが,やはり思うようにはいかないようです.橋を組み立てる段階になって,部材と部材が思うように接合できない,溶接による熱影響で部品に歪みが生じて,ボルトで締付けできないなど,問題が次々と発覚しました.
メンバー個人,それぞれのアルバイトや,近年,盛んなインターンシップ参加による欠員が出るなか,お盆期間中も夜遅くまで調整を繰り返し,上級生の助言も得ながら努力を重ねました.その結果,なんとかお盆明けに完成の目処がたちました.橋のパーツが完成したところで,次は制限時間30分以内で橋を完成させるための「架設練習」を大会直前まで行いました.
一方,上級生チームは,研究の合間を縫って橋製作を行いました.橋製作で生じる不具合もメンバーで意見を出し合って調整し,効率的に作業を進めました.昨年の大会で得た反省を生かし,橋のデザインも熟慮して決定しました.部材完成後の着色も終え,架設練習を3年生メンバーと場所を共有しながら何度も行って本番に備えます.
今年のブリコン,JSBC2019は九州工業大学(戸畑キャンパス)で実施されるため,総重量150kgとなる資材や保護具を梱包して,名城大学チームの2橋を大会会場へ発送しました.後は,大会会場でこれまでの練習成果を発揮するのみです.
JSBC2019会場に到着,橋は無事に完成するか?(開会式から2日目まで)
2019/09/02
大会初日となる8月28日,無事に九州工業大学(戸畑キャンパス)に到着しました.会場は同キャンパス内の体育館です.北九州一円に大雨による避難情報が発令される中,開催地区は幸いにも影響が少ないため,大会は予定どおり開催されることになりました.会場では九州地区の学生を中心に競技準備が急ピッチで進められていました.名城大学チームも,事前に輸送した資材の荷解きや会場設営の作業に加わりました.同日の夕方,参加学生と教員関係者が一同に介して開会式が行われました.今大会は,ブリコン開催10周年となる記念大会として全国の大学や高専から23チーム,総勢300名以上の学生が集結しました.ブリコンの見所である,橋の架設(組み立て)競技は,翌日の朝から開始されます.
今大会で名城大学はチームA(4年生メンバー)とチームB(3年生メンバー)が出場しています.大会2日目の架設競技では,総合優勝するために準備してきた学生らが,他大学チームの作品やその架設方法に注目します.翌日の架設競技では,名城大学両チームともに事前練習よりも3分以上早い時間で橋を完成させることが出来ました.組み立てが40分以内に出来ない場合は,大会ルール上,残念ながら失格となってしまいますが,無事,翌日の競技にコマを進めることが出来ました.
名城大学チーム,構造部門2位,そして総合準優勝を受賞!(大会最終日)
2019/09/02
大会最終日となる3日目,橋のプレゼンテーションと競技で最も難易度の高い載荷競技が行われました.前日の架設競技で惜しくも制限時間内に完成しなかったチームも含め,全てのチームが,自分達の作品を審査員にアピールします.
プレゼンテーションでは制限時間内に,3名の審査員(鋼橋のプロフェッショナル)に対して橋の設計?製作?架設方法?意匠等に関する説明を行い,質疑に応答する必要があります.審査員や教員,大勢の学生が見守る中,名城チームAは,岡嶋謙一さんとチームリーダー川上峻幸さん,チームBは,大嶋謙介さんとチームリーダー中西祥経さんがそれぞれ紹介パネルも駆使しながら質疑にも的確に応答しプレゼンすることが出来ました.
プレゼン審査の後,最後に載荷競技が行われました.大会ルールは,橋に設置されたレール上に,総重量200kgの錘を載せた台車を移動させ,橋の支間中央のたわみ(橋の変形)を目標値に近づけるというものです.単純に重さに耐える(変形しない)橋を作るのではなく,目標通りの値に安全な範囲で変形させるルールとなっています.さらに,事前の設計段階では目標値通りの変形を予定した橋であっても,前日の架設競技において,橋の組み立て時にボルトの締付状況や,ワイヤーの張力が変化していても,一切,手を加えて調整することは禁止されています.そういった理由から,載荷するまで橋のコンディションが読めないことから,非常に難易度の高い競技と言えます.
載荷競技においてチームAは,予定よりも橋の変形が大きくなり失格となってしまいました.設計上,難易度の高いワイヤーを採用して,かつ,変形を目標値に収める予定でしたが,残念な結果となりました.一方,チームBは台車の通過に一時,トラブルが発生しましたが,なんとか台車は橋を通過して最終的には,目標値に近い結果を出すことが出来ました.
大会期間中,企業による協賛ブースでは鋼橋の魅力を伝えるために,橋の製作,架設に関する最新の技術の実演や,第一線の技術者による講演も開催され,学生は興味のあるブースを訪れて質問するなど,有益な時間を過ごすことも出来ました.
大会の予定種目が全て滞りなく終わり,各チームの橋を解体して持ち帰るための荷造りと会場の撤収が進められました.全ての作業が完了し,いよいよ閉会式にて競技結果が発表されました.閉会式の表彰では,橋を組み立てる早さを競う架設部門,橋の強さ(設計値通りに変形すること)を決める構造部門,橋の美しさを競う美観部門についてそれぞれ上位2チームが表彰され,各部門を総計して,上位2チームに総合優勝と準優勝が授与されます.このほか,今大会では審査員特別賞,学生部会賞なども用意されました.
全ての競技に関する審査の結果,名城大学Bチームが構造部門2位,そして,同チームが総合準優勝という名誉ある受賞をすることができました.大会に参加した全てのチームメンバーは,受賞の瞬間まで競技結果を知ることがないので,受賞を知った時は一瞬半信半疑でしたが,これまでの苦労が報われた瞬間でした.特に大会経験が初めてのBチームが受賞できたことは,上級生メンバーの手助けのお陰でもあります.猛暑の中,夏休み期間の大半をブリコンに費やして,つらい作業もありましたが,3年生,4年生それぞれの学生にとって,有意義なプロジェクトになったと思いました.