大学概要【2017年度実施分】食料生産を教材とした体験型教育プログラム.-ブドウの周年栽培管理,ワイン醸造そして販売-
農学部
ブドウ栽培から収穫そしてワイン醸造から販売を通して,食料生産と流通を体系的に学び,食の安全安心に携わることの重要性と責任を自ら学ぶことを目的とする.具体的には農学部附属農場のブドウ用施設の設計や栽培管理を行い,収穫したブドウは近隣のワイナリーとの連携により醸造し,その品質を見極め販売する.ブドウ産地やワイナリー見学,外部講師による講義などを取り入れながら理解を深めてゆく.
ACTIVITY
ブドウ苗の作成(挿し木繁殖)(5/23更新)
2017/11/28
長野県のワイナリーから頂いた休眠枝を使用して,挿し木繁殖を行った.休眠枝の保存と休眠打破の方法を学んだ.そして,穂木の作成と植物ホルモンであるオーキシンを利用した発根促進処理の方法を学んだ後,実際に挿し木を行った.発根までの管理は密閉差しと,人工気象器を使用した管理とした.
この苗木が発根すれば鉢上げし,2018年度以降の着果を目指して栽培管理してゆくとともに,接ぎ木苗として使用してゆく予定である.
雨よけ施設設置のための聞き取りと現地調査(5/29更新)
2017/11/28
4月から5月の間に,附属農場を数回訪問し現地の測量と施設利用目的や改善点などを聞き取り調査した.そこで,ワイン用ブドウへの雨よけの設置の必要性を学ぶとともに,設置と撤収の作業性改善が望まれていることを学んだ.また,聞き取りのみではなく,既存の施設に雨よけビニル設置作業を実際に体験することで,設備を設計する時のポイントが分かりやすくなった.これら複数回の調査を元に,新たな設備設計を始めてゆく.
日本ブドウ?ワイン学会(ASEV Japan)西日本地域研究会 第17回研究集会 参加(6/13更新)
2017/11/28
6月10日に京都大学で,仏モンペリエSupAgro トレグロッサ教授による「地球温暖化が進行する中でワイン産業を持続的に発展させるためのワイン用ブドウの遺伝資源の多様性の探索」が通訳付の英語で行われた.地球気温上昇とブドウの品質との関係,市場のニーズに合わせた品種改良など農業が進化し続けていることを学んだ.親日家で日本の講義も多い教授で,非常に聞きやすく,理解しやすい英語で理解が深まった.
山梨大学附属ワイン科学研究センター 久本准教授による「ワインのアロマとオフフレーバーのテイスティング」.実際にワインの香り成分として含まれる化学物質の香りを体感し,官能試験につなげるトレーニングだった.公正な評価には主観でなく客観であることを再認識した.
京都大学 川﨑助教「仏モンペリエSupAgro を拠点とした南仏ワインビジネスに関る交流実践」.国際交流の紹介で,毎年複数名の学生が同行している.ワイン産業の紹介と参加した学生の海外留学率が高いなど,産業だけではなく国際的視野を得ることが必要との内容が興味深かった.過去に名城大も同行したことがあり,強く参加を勧められた.
ブドウの管理(芽かき,誘引など)(7/11更新)
2017/11/28
5月20日から6月19日まで4回にわたりワイン用ブドウの管理(芽かき、摘房、枝の誘引など)と施設管理(誘引線の設置)を行った。まずは枝の数と房の数を調整するとともに伸びた枝を誘引した。これらの作業によって結実過多や、枝が混み合うことによる日照不足や環境悪化を防ぐことで果実品質が向上する事を学んだ。また、増殖した苗の設置場所にブドウ用の垣根を設置した。誘引線は作業性と新梢成長を考慮して決めた。今後もブドウの成長に合わせて芽かき、摘房を定期的に行う必要がある。(4年生阿部原文.教員中尾加筆)
新たなブドウ雨よけ施設の検討(経過報告)(7/12更新)
2017/11/28
理工学部建築生田研究室が主体となってブドウの雨よけ施設の設計を4月以降行ってきた.そこでは設計案の検討会が数回行われた.さらに,附属農場フィールドサイエンス研究室と合同で2回(5月と7月)の打ち合わせを行った.綿密な設計やモデルの作成などに農学部の学生が初めて直接触れた.このような説明手法は,計画が具体的にイメージでき有効であることを認識した.また,理工学部の学生にとっては,植物栽培と施設をよりよい物にするための情報収集の場となった.
園芸学会参加とワイナリー見学(9/7更新)
2017/11/28
9月2~3日に北海道札幌市で開催された園芸学会に参加した.開催地である北海道は日本最大のワイン用ブドウ産地であるとともに多くのワイナリーがある.学会では近年のワインブームも反映してか,醸造用ブドウに関する発表がいつもより多く,栽培管理の省力化を目指した仕立て方や不飽和脂肪酸に関する報告などがあった.また,シンポジウム演題「北海道における醸造用ブドウ生産とワイン産業の振興に向けて」があり,北海道の気候に適した栽培体系の確立と近年の気象変動による栽培品種の変換などの話があった.4日には国内首位の生産がある北海道ワインと中央葡萄酒(甲州市)系のワイナリーである千歳ワイナリーを視察した.北海道でのワイン用ブドウの栽培と醸造,そして醸造方法の違いによる製品の特徴付けの説明を受け,北海道の主要ブドウ品種のワインを用いてテイスティングした.また,千歳ワイナリーではワイン醸造技術を生かしたハスカップワインの生産についても話を聞いた.学会とワイナリーともに,気象変動がブドウ栽培に大きく影響し,これまでは寒冷地に強いドイツ系品種や日本野生ブドウの交雑種が主体であったが,フランス系品種の栽培も可能になってきたことが北海道の特徴であることを学んだ.
醸造用ブドウの収穫(9/19更新)
2017/11/28
農学部附属農場で栽培しているワイン用品種メルロー,アルモノワール,ピノノワール,ベリー?アリカントAを9月8日と11日に収穫した.ワインの品質,特に香り,を良くするために,ブドウの房から腐敗や着色不良の果粒を取り除いた.これらの果粒はワイン醸造を行う時に,雑菌の繁殖やオフフレバーと呼ばれる異臭の原因となる.果房の調整作業後は,仕込みを行うまで冷蔵庫で0℃保存し.醸造は微生物を利用した発酵である.この時にわずかな雑菌や不良な果粒を含むことでワインの香りに大きな影響を及ぼすこと,品質を上げるためには綿密な作業が必要なことを学んだ.(4年生山本一原文.教員中尾加筆)
ワインの仕込み(9/19更新)
2017/11/28
農学部附属農場で収穫したブドウを使用し,小牧ワイナリーでワインの仕込みを行った.ブドウからワインへの醸造過程を学んだ.ワインを作るためには,まずブドウの品質が重要であること.果房の調整,酵母の選択,発酵中の温度管理,発酵途中の管理など,多くの繊細でありながら体力の必要な作業の連携により製品化することを学んだ.また,ワイナリーで醸造中のブドウ果汁の発酵に伴う変化に触れることが出来た.
作業としては,始めに除梗機を使ってワインの青臭さの原因となる果梗を取り除いた.除梗機で取り除ききれなかった果梗は手作業で丁寧に取り除いた.この作業の後,品種ごとにブドウの発酵の準備をした.2週間程度発酵させた後,果汁を絞る予定である.(原文4年生竹内.教員中尾加筆)
ワインの圧搾(10/10更新)
2017/11/28
9月12日の仕込みから約2週間はっ酵させたブドウ果汁の圧搾を行った.このはっ酵期間中に果皮や種子から様々な成分が抽出され,ワインの風味を醸し出すことを学んだ.仕込んだブドウ4品種の色や風味は異なっていた.特に,欧州系品種と欧米雑種では色が異なることを観察した.また,圧搾後の果汁は濁っていたが,少し静置すると透明度が増した.これは,果汁中の果肉などの固形物や酵母による濁りであることを知った.さらに発酵と熟成を行い,その工程の中で滓引きすることで透明度の高い赤ワインになるそうだ.ブドウの残渣はたい肥として利用するために圃場に戻した.(原文4年生阿部.教員中尾加筆)
長野ワインフェスタにボランティアとして参加(11/28更新)
2017/11/28
11月26日に名古屋市の円頓寺商店街で行われた長野ワインフェスタにボランティアとして参加した.長野から20のワイナリーが参加し,地域ごとにブースを設けてワインの紹介をしていた.会場での作業内容は準備,本部での受付および街頭での案内,撤収であった.ボランティア担当時間の割り当て後はワインの違いを学ぶためだけではなく,長野の農産物を扱った各ブースを訪問した.そこで,ワイン醸造法や品種により味わいが著しく異なること,リンゴの品種の比較などを学んだ.会場では農学部の加藤先生の「長野県の発酵食の魅力」の講演を聴く機会もあった.来場者は2,000名近くと聞き,人々の関心の高さを知った.