大学概要【2021年度実施分】空き家を新たな地域コミュニティ資源として活用(木曾平沢伝統的建造物群保存地区?半田市亀崎景観形成重点地区を中心として)
理工学部
地域?行政と連携しつつ、地域に存在する空き家などについて建築の地域資源としての価値?魅力を発掘する調査研究やワークショップ、その活用の可能性を示す提案の製作やイベントなどを実施する。
学外の多様な立場からなる他者との協働による刺激により、学生が成長する機会を創出する。
ACTIVITY
木曽平沢伝統的建造物群保存地区での古い小屋の撤去作業
2021/07/07
写真1:木曽平沢ふるもの市の様子
【活動報告】
長野県塩尻市木曽平沢は、漆産業が盛んな漆工町として、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。本プロジェクトでは、そんな伝統的建造物群保存地区の特定物件でもある「わじまや」という屋号の建物で、現在は「木曽平沢ふるもの市」というお店で使われている建物の改修等を行なっています。(写真1)
写真2:撤去した小屋
「木曽平沢ふるもの市」とは、塩尻市の地域おこし協力隊として空き家コーディネート業務を担当している立川氏が、解体が決まった空き家などから「壊してしまうには惜しいふるもの」たちを譲り受け、次の使い手へと再循環させる取り組みです。
一方で、長らく空き家だった建物は、まだまだ手入れが必要な状況です。ふるもの市オーナーから依頼を受け、名城大学建築学科佐藤研究室ではこの空き家の改修のお手伝いをしています。
写真3:路地側の様子
今年度は、ふるもの市のお庭にある、壊れそうなトタン張りの小屋の撤去?設計?新築作業を行いました。この小屋、路地にも面しています。路地に向けてトタンの塀が連続する景観は美しいものとは言えませんでした。この小屋を新築することで、解放的な路地を作ります。
(写真2)(写真3)
改修設計に関しては、昨年度のMS26の取り組みにありますので、こちらをご覧ください!
写真4:学生の撤去作業風景
解体作業は、建物の成り立ちを逆転で確認していくような作業でした。どこが脆くてどう壊れるのか。そして、どの部材は再利用が可能なのか。この部材を丁寧に選り分けることで、新しい小屋の材料として再編します。乱暴に壊すとただのゴミですが、丁寧に壊すと資源になる。そんなことを考えながら作業にあたりました。(写真4)
半田市亀崎にてインスタレーション展示を行いました
2021/09/06
半田市亀崎 浄顕寺にて、インスタレーション展示を行いました。
このインスタレーション展示は、3年生が一丸となって昨年度から準備を続けてきたもので、地域の方々と共に体験型アートを楽しむ企画です。
コロナ禍もあり苦労しましたが、ハレの日を迎えることができました。
浄顕寺の境内の中央に、銀杏の木を取り囲むように、視覚を惑わすようなインスタレーションが出来上がりました。
夕暮れ時から展示ははじまり、最初は銀色のうろこのような全体像が見えていますが、夜に向かってあたりが暗くなるに従い、来訪者がカラフルな光の投影機を持って、照らしながら鑑賞します。
二日間で約70名の地域の方々、子供達に来訪いただきました。
作品:【煌めきを纏う《Installation》】
古くから漁業や貿易を生業とし、海と共にあった街、亀崎。
魚の鱗を模した600枚のミラーは、銀杏の木を依代に渦を巻く。
亀崎一の古寺浄顕寺は、一夜限り海の煌めきを纏う。
木曽平沢伝統的建造物群保存地区での古い小屋の新築作業
2021/12/09
長野県塩尻市木曽平沢の小屋の撤去?設計?新築作業。
今回は、新しい小屋の新築作業の様子を報告します。
学生はいくつも模型を作り、工程表なども作成し、いざ現場へ!
現場は、まずは、部材の選り分けから始めました。
これまでにそこに建っていた建物の部材を丁寧に選り分け、使えるものを選定して行きます。木材は縦方向には強いので、古材は基本的に縦方向で再利用し、力のかかる横材は近くの製材場で入手した木曽檜を使って補強しました。
使える部材の仕口作業を行いました。ノミやノコギリは、使うたびにどんどん上手になっていました。
その後、沓石で基礎の位置を固め(これが一番しんどい!)、建て方作業に入ります。
水平?垂直を丁寧に取りながら、柱?梁?桁?棟木?垂木と、徐々に建物の形が出来上がって行きます。
そして、6日間の工期を経て、どうにか小屋の形が出来上がりました。
また、今回は、古い材料を再編するというものでもあります。
細い部材は細い部材で集め、それらを集積した格子の塀も作りました。丁寧に仕上げると、丁寧な見えになります。
壁作業は全て終わらなかったので、今後、もう一度出張して仕上げて行きます。
木曽平沢伝統的建造物群保存地区での古民家の改修企画
2021/12/09
長野県塩尻市木曽平沢は、漆産業が盛んな漆工町として、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。今年度からは、新しい建物「千代松」の再生計画の作成サポートが始まりました。
長らく空き家だった「千代松」ですが、今年度より、漆職人さんが借りて、新しい利用が始まりました。でも、建物自体はボロボロ…。これをどのようになおして、どう使って行くのか。全くの手探り状態ですが、利用者や所有者の意見を聞きながら、どんな形での利用がありうるのか、学生と一緒に検討しています。
まずは実測調査を行いました。
初めての実測で悪戦苦闘!しながらも、メジャー片手に図面を取ります。
その後、大学に戻り、実測結果に即して軸組模型を作成しました。 それを元に、利用者さんと大学をオンラインでつなぎ、打ち合わせを行い、だいたいのイメージを掴みました。
今度は要望がわかってきたので、それに即していくつかの提案を作成しました。そして、再びMT。
ここからは大まかな利用イメージがつかめてきたので、ここからは更に具体的なフェーズへ。 所有者さんとの打ち合わせや予算計画を詰め、どんな利用をして行くのかのイメージを確定させて行きます。
酒造用の歴史的建造物を活用する、イベントのための家具を制作中
2021/12/12
半田市亀崎は江戸時代より酒造で栄えた町です。
学生達は、その歴史的な価値に着目して自分達の制作企画について持ち込みで相談させていただきました。
今回は、伊東株式会社の御協力?了解を得て、かつて酒造業に用いていた歴史的建造物を舞台とし、その活用の一環として、イベント開催用の家具を提案させていただいています。
9月には、実際の建造物を見学し簡単な実測をした後、制作にあたっては、学生相互に様々な案を持ち寄り議論を進めています。
歴史的な建造物が地域に開かれるイベント開催の構想があり、その時にカウンターやベンチとして使用できるような家具を考えています。これまで例えば酒樽の古材を活用する案や、自由に組み替えられる曲線のカウンターを組み込んだ案などが出てきましたが、いくつかの案を経て「酒を江戸に運んだ弁財船」をモチーフとした案で進めていくことになりました。これから制作に向けて更にディテールを検討して行きます。
実際の建物を舞台として、歴史文化の重みと、現代の新しい価値の双方のテーマに応えうる案を検討していくことは、学生達にとって大きな学びの機会となっています。