2022年度の前期、藤原ゼミではNPO法人「学び舎つばさ」と連携してオンライン日本語授業を実施しました。ベトナムの日本語学校「TSUBASA」、日本の名城大学、そして留学先カナダのカルガリー大学?ウィニペグ大学をオンラインで繋ぎ、2ヶ月間にわたって、ゼミ生が日本語の授業を実践しました。こちらはその報告です。
日本語授業を取り入れる目的
この実践の主たる目的は、「日本語教育実践の取り組みをとおして、日本社会がこれから迎えるであろう「外国人」との共生について理解を深めること」です。日本の人口減少といわゆる「グローバル化」を背景に、日本とアジア諸国、とりわけベトナムとの結びつきは強くなると予想されています。愛知県の在留外国人数は全国2位、また日本語指導が必要な児童生徒数は全国1位です。中でもベトナム出身の方の増加は著しいです。
また「いわゆる「ネイティブ」として日本語を教えることにより、言語知識、教育実践の技能、そして異文化について理解を深めること」も目的としています。「ネイティブであれば、誰でも言葉を教えられる」、こんな言説を時に耳にします。この言説がどれほど安易なものであるか、実際に体験してみるとよく分かります。
日本語教育実践を終えて
教材は「みんなの日本語」(スリーエーネットワーク)でした。指導法は日本語のみを使用したいわゆるPPP(presentation, practice, production)のような形式で進められました。初級者なので、先生のモデルを繰り返す練習のフェーズが多かった印象です。ですが、時にベトナムと日本の野菜と果物の境界線や喫茶店/スーパーの営業時間などの意味のあるやりとりも日本語で行うことができました。日本語だけでは説明できない文法や文化事情がある際には、TSUBASAのスタッフである日越バイリンガルのゴックさんにサポートしてもらいました。
学生の感想
前期の日本語教育実践を通じて、改めて新たな言語を学ぶことの難しさや教える楽しさを実感しました。最初のチームで授業を初めて行った際に、繰り返して欲しい時に使う表現が統一できておらず、私がくりかえしてください、他のメンバーがリピートしてくださいと言ってしまい、ベトナムの子供達が困惑してしまっている場面がありました。まだ日本語を習いたての彼らにとって、聞き慣れている言葉を用いなければその言葉が何を意味しているのかを理解するまでに時間がかかってしまうと学びました。
また、一枚一枚のスライドを作る際にも工夫が必要でした。新出単語を提示する際にはそれを覚えているか確認のスライドを作ったり、1スライドには1つの単語と写真だけにしたりすることによって、単語をより覚えてもらいやすくするように工夫しました。
スライドの枚数の点でも比較すると最初に作ったスライドの数は35枚でしたが、最後に提出したスライドの枚数は78枚であり、約2倍に増えていました。同じ授業時間であっても、たくさんアクティビティを作り、ただ単にイェスノーの問題ばかりではなく、並び替えや自分達で考えさせるような問題を作ることにより、一回一回の内容の定着度が上げることが出来たように感じます。授業を行う際にも、日本語を日常使いしている私たちが、「いく」「くる」の使い分けや、どの単語にどの助詞を付けたらいいのか戸惑ってしまうことがありました。
私たちも彼らと同様に日本語を学ぶだけではなく、日本語の難しさを再度認識しアクティビティに取り組みました。この経験を通じて日本語教育についてとても面白さを感じ、私自身も成長することが出来ました。
(外国語学部3年 前田遥香さん)
おわりに
学生たちは毎回、授業で用いるスライドを事前に教員に提出し、担当教員がフィードバックをしました。ゼミ担当の藤原は日本語教育能力検定試験に合格はしましたが、日本語を母語とする学習者対象の英語教育が専門です。ですので、日本語を介しない学習者への日本語教育は新たな領域で、言語教育を多角的に考える良い機会になりました。このような機会をいただきましたNPO法人「学び舎つばさ」のゴックさんをはじめとして、皆さんに感謝するとともに、TSUBASAの学生さんと私たちのつながり、ベトナムと日本の関係が深まることを願っています。
(文責:外国語学部教員 藤原)
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