大学概要【2017年度実施分】地域のまちづくり活動(宿泊施設を活用した地域まちづくり)
理工学部
近年新たな宿泊施設の業態として需要が拡大しつつある「宿泊施設型ゲストハウス」を中心に、わが国が直面する空き家活用?地域活性化の手段、インバウンド(訪日外国人旅行客)等の受け皿としての可能性を追求する実践的な取り組みであり、行政や住民とのワークショップによりこれからに向けた提案を行う。
なお、本事業は2年目の事業であり、昨年度は歴史的宿場町である『亀山市関宿』を対象とし、本年度はその継続に加え、新たに地方都市を対象とし取り組む。
ACTIVITY
最新の宿泊施設の動き「民泊」に関する情報収集
2018/03/08
近年急速な動きが見られる「民泊」について、次の2件の情報収集を行った。
(1)都市住宅学会大会?ワークショップ「『民泊』を考える-民泊新法の施行と既存ストックの有効活用に向けて」2017年12月3日
司会?発表者は次の通り。
?浅見泰司氏(東京大学大学院工学系研究科)
?田口壮一氏(国土交通省観光庁観光産業課)
?上山康博氏((株)百戦錬磨)
?安念潤司氏(中央大学法科大学院)
?中川雅之氏(日本大学経済学部)
(2)日本建築学会?住宅系研究報告会パネルディスカッション「『民泊』で住宅を地域に開く」2017年12月8日
司会?発表者は次の通り。
?松浦健治郎氏(千葉大学大学院工学研究科)
?三口聡之介氏(とまれる(株))
?稲生勝義氏(千葉市総合政策局)
?赤崎盛久氏(あきや活用まちづくりセンター)
?横山宜致氏(篠山市まちづくり部)
ゲストハウスに関わる基礎調査
2018/03/12
歴史的宿場町(関宿)でのワークショップのために基礎情報として、11月~1月に、次の2つの情報収集を行った。
(1)愛知県の東海道宿場町の現在の状況と用途の調査
?9宿場町の建物軒数と現用途を、住宅地図と現地踏査により明らかにした。
?建物の数?自治体の取り組み?産業の発展の3点が観光の用件であり、この3点が揃っていたのは二川宿であった。
(2)チェーン展開型ゲストハウスの経営と利用の調査
?4つのゲストハウスチェーンのHP上の情報分析、および2事例のヒアリング調査を行った。
?外国人も含めた客層により来訪時期やニーズが異なり、例えばKチェーンでは外国人が主ターゲットであり、飽きられないように店舗の改廃を行っている。
?運営はまだマニュアル化されていない状況だが、その兆しは見られた。
歴史的宿場町(関宿)についての意見交換
2018/03/12
2018年 2月22日 亀山市市民文化部長、同 関支所長と次の情報交換を行った。
(1)上記の2つの調査成果の紹介と意見交換
(2)ここ1年の関宿の動きについての懇談
?関宿に対する内部と外部の評価の違い、住民の意識
?今後の世代交代や経年変化の中で起きてくると予想される現象
?外国客船の入港など、地域の新たな観光需要の発生
?旧国民宿舎「関ロッジ」が「ゲストホテル関ロッジ」としての開業など、民泊も含めた宿泊に関わる動向
地方都市のゲストハウス事例のヒアリング調査
2018/03/12
具体的な3事例の情報収集を行った。立地?観光資源、開業の経緯、オーナーさんの志などにより多様な展開を見せている。ゲストハウスのあり方に対する示唆に富む事例として、以下に概要を紹介する。
(1)ゲストハウスA(尾道市)
1)施設概要
?定員:19名(ドミトリー) ?開業年:2012年
2)開業の経緯
?空き家再生プロジェクトのNPOのコアメンバーが、活動の延長線上の事業としてスタート。
?併設のカフェがあり、一体的に運営。
?利用客が一人になれるスペースがあり、利用客との距離の取り方はフリーな形。
3)立地?利用客の特性、まちとの関係など
?利用客は多様だが若い人が多い。日本人が7~8割か。
?ゲストハウスのある商店街は一定の店の入れ替わりがあり、個性的な店も少なくない。
?尾道市の観光客数は広島県第二位だが、日帰り客が多い。
?斜面住宅地の景観?眺望やしまなみ海道観光ルートに、2014年に開運倉庫を再生した宿泊施設U2が加わり、まち全体が一つのテーマパーク風。
商店街の様子(昔の山陽道)
(2)ゲストハウスB(岡山市)
1)施設概要
?定員:22名(ドミトリー、個室) ?開業年:2013年
2)開業の経緯
?不動産会社と建築設計事務所が立ち上げたグループに参加した地元出身のオーナーが、建物の個性と立地を勘案し、岡山市初のゲストハウスとして開業。父親も地元出身で周辺に知人も多い。
?同じ商店街の店舗では長期休暇?日曜昼などの対応に限界があり、自営の飲食店舗もスタート、家族客向けに別館も拡充。
3)利用客の特性、まちとの関係など
?利用客は幅広いが20~30才代が多い。日本人と外国人が半々で、外国人は欧米からアジア系へ展開。
?岡山市は、観光資源は多くないが交通利便性は良好で、倉敷?尾道?直島への日帰り拠点、宮島?出雲への中継地としての利用あり。
?商店街や町内会のイベントに参加。
ゲストハウスの目印の鳥居
(3)ゲストハウスC(郡上八幡市)
1)施設概要
?定員:16名(ドミトリー、個室) ?開業年:2017年
2)開業の経緯
?明治創業の老舗旅館が約20年間の休業を経て、リノベーションにより新たな一歩を。
?この旅館で幼少期を過ごしたオーナーさんのご夫婦が、定年を期に、空き家活用とまちからの景観への配慮から発案。
?地元にゆかりのある若手(建築コンサルタント、アートディレクター、庭師など)とアイデアを出しながら、中庭など町家の持ち味を生かしたコンセプト?デザイン?建築に。
3)利用客の特性、まちとの関係など
?利用客は多様で、外国人は1/3で欧米中心。
?以前の旅館を知る方が宿泊するケースもあるが、最初はゲストハウスの理解に戸惑う笑い話も。
?商店街の発展会のメンバーで、地域イベントも協力。
4)その他
?繁忙期は娘さんの力を借りるが、まずはご夫婦が自然体で取り組むことができる範囲で、利用客の受け入れの対応?体制作りから。