特設サイト第100回 漢方医学と漢方薬
このコラムも100回目を数えました。
2014年度に、それまでの名城大学広報の裏表紙から大学のホームページへと「お引っ越し」をして、足掛け10年になりますが、長かったような、短かったような...、そんなものですね。今回は、その区切りとして、あらためて「漢方医学や漢方薬」について考えてみたいと思います。
さて、薬学部における教育は、「薬学教育モデル?コア?カリキュラム」に則って行われており、その「D.医療薬学」の中で「D-2.薬物治療につながる薬理?病態」の項目の一つに「D-2-19.漢方療法」があります。この項目では、「漢方医学の考え方、漢方医学における疾患の概念、西洋医学と漢方医学の考え方の違いを説明する」ことや「代表的な漢方薬の適応と有害事象(副作用)、使用上の注意事項などを理解し、漢方療法を症状や疾患に適用する根拠を説明する」ことを学修目標としています。そのため、従来からの薬学部における専門科目である「C.基礎薬学」の中で学修する「C-5.薬学の中の生薬学?天然物化学」は、自然から生み出される医薬資源について学び、「古来より医薬品として利用されてきただけでなく、現在でも臨床で用いられる天然物医薬品としての意義や位置づけを学び、さらに漢方薬の構成生薬としての重要性を学ぶ」こととなっています。生薬は、「動植物や鉱物の医薬品として利用できる部分を取り分け、利用しやすく、運搬や保存に適するよう簡単な加工をされたもの」と定義されますが、いわゆる西洋医薬品も生薬の有効成分から作られたものも多く、また健康食品やサプリメントとして利用されるものもあり、とても身近なものです。ただ、身近さゆえに医薬品という認識に欠け、ときに用い方を誤ってしまうこともあると思います。改めて、ご注意いただけますと助かります。
また、世の中には「相補?代替医療」という言葉があります。最近では、「補完?代替医療」ともいわれるようで、「グローバル化?標準化された現代医療と併用(補完)または代わりに行われる(代替)脾狩猟の医療の総称である」と説明されます。さらに、「統合医療」という用語もあり、「近代西洋医学と相補(補完)?代替医療や伝統医学などを組み合わせて行う療法」であると説明されます。これらの用語について、わが国では明確な定義がなく、漢方医学や漢方薬による薬物療法もこれらに入るのかという質問を学生から受けることがあります。確かに曖昧かもしれません。しかしながら、漢方医学や漢方療法については、薬学部のみならず医学部においても教育制度の中で教え、学ぶべき項目としてありますし、代表的な生薬や漢方処方(漢方エキス)は日本薬局方などでその規格?基準が定められた医薬品ですから、日本においては「漢方医学や漢方薬は相補(補完)?代替医療の一つではなく、現代医療で用いられる医療体系の一つである」と捉えるべきものとされています。
学生たちには、医療におけるさまざまな場面で、西洋医薬品として馴染みのある「化学薬品」だけでなく、生薬や漢方薬などの「天然物医薬品」も上手に活用して健康の回復に寄与できるよう薬物療法の「引き出し」を増やしてもらいたいと思います。
(2023年8月4日)