特設サイト第118回 漢方処方解説(67)桂麻各半湯
今回ご紹介する処方は桂麻各半湯(けいまかくはんとう)です。
名前が示すとおり、桂枝湯と麻黄湯を1:1で配合した「合方」で、桂枝湯と麻黄湯の両方の症状がみられるときに使用する処方とされます。「各半」と称しているので、1/2量ずつの混合かと思えば、古典的には1/3量ずつの配合で煎出するようです。
構成生薬は、桂皮、芍薬、生姜、甘草、麻黄、大棗、杏仁の7味です。
出典は桂枝湯や麻黄湯と同じく「傷寒論」で、「風邪(ふうじゃ)?寒邪(かんじゃ)」が軽微にはなっているものの、まだ体内に残っており、汗腺などの機能不全で「表」が閉じた状態であるからこそ、陽気による「熱」がうっ滞して顔が赤く、また「風邪」が外へと排泄されかけているために、体表面が痒くなっている状態が古典で言う適応時期で、この外へ「邪」を排泄するために用いる処方とされています。つまり、桂枝湯では完全に解決させることができず、とはいえ麻黄湯では強力すぎるため、両処方を1/3量ずつ合わせて「小しく(すこしく)汗を発する」のがよいという処方です。
また、桂枝湯と麻黄湯を2:1で配合する「桂枝二麻黄一湯(けいしにまおういっとう)」という処方もあり、細かな配合の違いで調節するところが一種の「配合の妙」とも考えられ、とても興味深く感じます。「邪」を追い出し、病気を治癒させるために「発汗させる」にも、その程度を調節する必要があると考えて、生薬の配合を変化させたり、処方の分量を調整して組み合わせたりして対応するなど、古人の智慧には目を見張るものがあります。この「少し発汗させる」ことを実現するために、発汗を抑制する方向で調節する処方に「桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいちとう)」という合方もあり、そのきめ細やかな調節に驚きだと思います。
このコラムでも以前から小柴胡湯をベースとした合方として、五苓散とのペアである柴苓湯や半夏厚朴湯とのペアである柴朴湯、さらには今回話題にした桂枝湯との合方である柴胡桂枝湯などがあり、それぞれの処方の特徴をうまくミックスしたものが知られています。また、既存の処方にいくつかの生薬を加味するもの、例えば葛根湯加川芎辛夷や抑肝散加陳皮半夏のような処方もありますし、多くの処方自体が「基本となる処方」に生薬を加味したり、取り去ったりしてできあがってきたところがありますから、その成り立ちを理解することは漢方処方の使い分け、つまり適正使用につながる重要なポイントだと思います。
(2025年1月31日)