kiki tie café(キキタイ カフェ)

"お話"を聴くことで、地域の医療ニーズを探る!

Enjoy Learningプロジェクト kiki tie(キキタイ)

地域の人たちの健康に関する悩みやニーズを探ることを目的に、地域イベントで「医療系大学生のカフェ」を出店し、話を聴く場を提供する「kiki tie(キキタイ)」。試行錯誤しながら地域住民と関わり、その声にしっかりと耳を傾けるメンバーの取り組みを紹介します。

左から神谷美名さん(薬学部5年)、田中優妃さん(薬学部5年)

PROJECT SUMMARY

どんなプロジェクト?

「kiki tie」では、月に1度、愛知県常滑市大野町で開催されるマルシェに出店し、医療系大学生が地域の人たちの“お話”を聴く「kiki tie café(キキタイ カフェ)」を開催しています。このカフェは、地域の人たちが「誰でも“お話”できる場を提供する」とともに、医療系学部で学ぶ学生が「地域医療のニーズを探る」ことを目的としています。

他大学?学部の仲間と一緒に活動をすることで、医療現場で重視される多職種連携の実践につなげたいという思いから、薬学部の神谷美名さんが藤田医科大学医学部に通う友人と活動をスタート。現在は、愛知教育大学教育学部や愛知学院大学歯学部のメンバーも仲間に加わりました。

WHAT WE LEARNED #01

やってみたからこそ分かった、「話してもらうこと」の難しさ

「話を聴くこと」をテーマにしたことには、二つの理由があります。「一つ目は、相手に寄り添い共感しながら聴く“傾聴”は、医療人に求められる重要なスキルだから。二つ目は、地域の人たちにも健康の悩みを聴いてほしいというニーズがあると考えました」と神谷さん。

しかし、初めから順調に進んだわけではありません。このプロジェクトは「何でも聴きます。カフェ」という前身の活動からスタートしていますが、その時は失敗に終わったといいます。「見ず知らずの医療のプロでもない学生に、いきなり健康や病気の話をしていただくのはハードルが高かった」と神谷さんは振り返ります。

そこで神谷さんが相談を持ち掛けたのが、同級生の田中さんでした。「相談を受けて感じたのが、学生にとってのメリットは理解できるものの、地域の人にとって話を聴くことがどのような価値につながるのだろうかという疑問。神谷さんには、率直な意見を伝えました」と田中さん。その意見は、地域の人の目線で考える必要があるという気付きにつながります。

WHAT WE LEARNED #2

楽しんでもらうことで、地域の人との距離も縮まった

悩んだ末にたどり着いたのが、「一息つけるコーヒーの提供やワークショップなどを取り入れ、カフェとしての魅力を高めることでした」と神谷さん。提供する飲食物やワークショップで使う材料を調達するための費用は、Enjoy Learning プロジェクトの助成金を活用。「kiki tie café」として再スタートします。

特に、良い効果をもたらしたのが、メンバーそれぞれが得意なことを生かし企画した似顔絵や絵葉書づくりなどのワークショップ。気軽に訪れる人が増えると同時に、会話もしやすくなったといいます。

「例えば、似顔絵を描きながらだと『好きな色は?』『お住まいは?』と質問もしやすく、以前からの課題だったぎこちなさも解消されました。家族や仕事のことなどプライベートな話につながりやすくなった」と神谷さんは話します。

WHAT WE LEARNED #03

医療を学ぶ学生の私たちだから、できること

地域の人たちとの距離が縮まるに連れて、本来の目的であった健康に関する困りごとやニーズを話してもらえる機会も少しずつ増えていきます。

「家族に心配をかけたくなくて、病気の悩みを打ち明けられなかったという人が、学生の私たちだから話してくださることも度々ありました」と神谷さん。また、医師に病気のことは話せても、家族の悩みまで相談できないケースもあり、医療を学ぶ学生だから役立てることがあると感じたといいます。

田中さんも、「『誰かに聴いてほしい』といったニーズが存在することを確認でき、とても勉強になりました」と話します。

NEXT STEP

取り組みを全国の医療系大学生と共有、活動も広げていきたい

持病を抱える人の悩みや、子育て中の親の大変さなど、活動を始めるまでは想像するしかなかったリアルを知ることができたことも、貴重な体験になったというメンバーたち。活動を通して得た気付きを皆で共有するほか、学会での活動報告や県外の医療系大学生との意見交換などを通じて、学びを深めています。

「病気を抱える方の思いや、地域の特性を肌で感じることができました。将来、患者さんの服薬指導や課題解決の手掛かりとして生かしていきたい」と手応えも感じており、今後については「別の場所での活動も予定しており、一緒に取り組む仲間も増やしていきたい」と語ってくれました。

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